◆STEP 8:初頭音の認識

「音あそびをしよう!」特集も、STEP 8 となりました。
これまで
STEP 3~7 を通してローマ字学習と重ねて「子音の音」の存在への気付きを促す活動を行ってきました。今度はその気付きを、英語の語を用いて積極的に働かせる活動を行っていきましょう。

ターゲット音が /d/ のとき、dog と fog を聞いて、どちらの「はじめの音」がターゲット音と同じか分かるかな?

上の例のように、STEP 8 では、語を、その「はじめの音」に焦点を当てて聞き、その音が「ターゲットとして示された音」と同じかどうかを認識できるようになることを目指します。語の「はじめの子音」を続く「母音」(もしくは別の「子音」)と分割すること(segmentation)に加え、その音を一定期間「保持」し、同じく保持していた「ターゲット音」と比べて、同じ音かどうかを判断する技能を高めるものです。

◆指導のヒント

日本語を母語とする子どもたちは、「しりとり」などの「ことば遊び」、「短歌」や「俳句」などに触れることを通して、「子音+母音(C+V)」というまとまりで音声言語を区切ることに親しんでいきます

例えば、ジャンケンをして「グー」で勝てば「グリコ」の音の数の3歩、「チョキ」で勝てば「チョコレート(チヨコレイト、チヨコレエト)」の6歩、「パー」で勝てば「パイナップル(パイナツブル)」の6歩進める遊びがあります。
「チョコレート」の拗音「ョ」や「パイナップル」の促音「ッ」をそれぞれ「ヨ」や「ツ」の1文字としたり、長音記号「-」も「イ」や「エ」に置き換えたりしながら、「母音+子音」のまとまりで音の数を数えていきます。

また「しりとり」では,例えば「と」から始まる語を探す時,「とあ,とい,とう,・・・とうふ!」のように50音順に音を続けてみたりしますが,これは語の「はじめの音」を「子音+母音」(もしくは単一母音)として保持することを促します。この「母音+子音」のまとまりは「モーラ(拍)」と呼ばれ、日本語の基本的な音韻単位であり、1つのモーラが1つの仮名文字に対応しています

一方、英語では、基本的音韻単位が「音素」であり、「はじめの音」が子音である場合,その後ろには母音でも、別の子音でも続くことができます。例えばbagという語では、子音 /b/ に母音 /a/ が続いていますし、blackであれば /b/ /l/ という子音が続き、その後に母音 /a/ から始まるまとまり(ack)が付いています。

日本語を母語とする子どもは、これらの語の「はじめの子音」を取り出そうとすると,bag では「はじめの『子音』と『母音』」をまとめて /bæ/blackでは「はじめの子音 /b/」の後に子音が続くので、その間に音声的に結合しやすい母音を補って /bu/ と言ってしまうことが多いのです。すなわち,英語でも語の「はじめの音」を「子音+母音」の単位で区切るのです。

だからこそ、慣れ親しんだ英語の語を使って、「はじめの子音」だけを取り出したり、「子音」の音だけをしばらく記憶(保持)したりする練習をすることが、語を、それを構成する個々の音に分割できる技能の発達につながります

STEP 8 では、cat, net, lip, dog, bus など「子音+母音+子音」の音韻構造をもつ語(CVC語)に加え、次第に clip, drop などの子音連結を含む CCVC語 も少しずつ扱っていきます。

◆活動のめあて

① 語の「はじめの子音」の音を取り出して認識し、それが「ターゲット音」と同じかどうかを識別できる。
② 複数の語を、それぞれの「はじめの子音」の音により分類することができる。
③ 語の「はじめの子音」の音を適切に発音することができる。

◆所要時間:導入活動のみ 20分/Worksheet 8-1 15分、 Worksheet 8-2 15分


《Worksheet 8-1 は
こちら からダウンロードできます》


《Worksheet 8-2 は
こちら からダウンロードできます》

◆The Flow of Instruction 指導手順

1.ピンク色の絵カードを示しながら、“What colour is this?” “Yes, it’s pink. Do you like pink?” などと尋ねる。続いてカップの絵カードを示し “What’s this?” “Yes, a cup.” のように児童とやり取りを行う。

* 「ピンク色のカップ」の絵カードがあればそのカードで上のやり取りを行い、最後に “It’s a pink cup.” でまとめる。

2. “pink, pink, /p/, /ink/, /p/, /ink/, ink!” のように「はじめの子音」(オンセット)と「残りの部分」(ライム)を分けて発音し、“ink” の部分で「インク」の絵カードを示す。同様に “cup, /k/, /up/, /k/, /up/, up!” のように「上方向の矢印」の絵カードを見せる。続いて児童と一緒に言ってみる。子音 /k/ だけ発音する時には、喉に軽く手を当てて震えがないことを確かめる。

dear(鹿)/ ear(耳)、cold(寒い)/ old(古い)、foil(ホイル)boil(沸かす)/oil(オイル)などの組合わせを含めて、ライムのはじめの母音をa, e, i, o, u全て揃えることもできます。あくまでも語の「はじめの子音」を取り出すイメージを示すだけなので、慣れ親しんでいない語であれば無理に扱う必要はありません。

3.STEP 1, 2 で脚韻の認識に用いた語の絵カードなどを提示し、例えば “map” であれは、“What is the initial sound? と尋ねながら /m/ を児童から引き出し、全員でその「音の出し方」を確認する。さらに、“map, /m/, /m/, … /ap/!のように「はじめの音」と「残りの部分」を区切る練習をする。

* 無声音の時には喉の震えがないことを意識させます。「はじめの音」が同じ絵カードが出てきたら、それらをまとめて黒板に貼るなど、「共通するはじめの音」に気づくよう促す。

4.Worksheet 8-1を配付し、1 の活動から行う。ターゲット音を指導者が口頭提示したら、子どもたちにも、それを真似て何回か発音させる。その際、無声音のターゲット音の後ろに母音が挿入されないように、喉に手を当てて震えを意識させる。ターゲット音と「はじめの音」が異なる語については、その音を分割して発音させながら確認する。

*1の活動は、1つのターゲット音に対して聞き分ける語が多いので、必要に応じてターゲット音を再提示する。

5.続いて Worksheet 8-2 を配付し、1 の活動から行う。

◆ Answers for the worksheets

■Worksheet 8-1
    
1.  〇 [bag / book]
     2.  × [gum / dog]
     3.  〇 [soap / star]
     4.  × [map / cap]
     5.  〇 [dog / desk]
     6.  × [pen / spoon]
     7.  〇 [fish / fan]
     8.  〇 [tape / tomato]
     9.  × [zip / dish]
   10.  〇 [cake / corn]

■Worksheet 8-2
   
① pen  / (1) [lip],  (2) [map],  (3) [pig]
    ② map  /  (1) [gum],  (2) [mat],  (3) [fish]
    ③ bus  /   (1) [book],  (2) [bat],  (3) [dog]
    ④ ten  /   (1) [tip],  (2) [tiger],  (3) [hit]
    ⑤ gum  /   (1) [donuts],  (2) [game],  (3) [boat]
    ⑥ cat  /  (1) [cake],  (2) [hat],  (3) [cap]
    ⑦ fan  /  (1) [ham],  (2) [fish],  (3) [hat]

 

イラスト協力:愛知県立大学 外国語学部 4年 濱口 果奈 さん

 

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