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皆さんの学校では、夏休みや冬休みなどの長期休業中にどのような課題を出しているだろうか。「例年にならって問題集を1冊与えているだけで本当にいいのだろうか」と疑問を持ち、夏休み課題を「生徒が自由に英語と向き合って学ぶ取り組み」へと変えた学校がある。新潟県立新発田高等学校2年生の英語科教員たちがこの夏、初めて生徒に課したのは、「英語を楽しむ」ことを目的とした学びだった。(『英語情報』2019創刊号より)

疑問から始まった課題の見直し

新発田高校の夏休みは7月30日から8月25日まで。例年であれば、6〜7月頃に学校出入りの書店に、夏休み課題用の教材を注文する。だが、2年生となり英語力の差が開いてきた現状に対し、生徒に英語力を付けるためには、これまで同様に時事問題をテーマとする総合問題集を1冊提示するだけで本当によいのか。学習して覚えた英語を実際に使えるようになるのか。生徒によっては自力で全てを解き終えることができず、解答を写してくるだけということもあるかもしれない。あるいは、実用英語技能検定(英検)準1級以上の英語力を持つ生徒には、物足りない内容であるかもしれない。実際に生徒たちにとって、この問題集は「やらされている」気持ちが強くはないのか。自ら学びたいと思って取り組める課題になっているのか。2年生を担当する根立望先生は疑問を感じていた。そして、同じく2年生を担当する廣澤卓郎先生と村山真優先生に相談を持ち掛けた。思いは同じだった。

新発田高校の2年生にとって、ふさわしい課題とは何か。3人で立ち止まり、改めて課題のあり方を考えたとき、「生徒には英語を楽しんで学んでほしい」「本物の英語に触れてほしい」という共通の思いが浮かび上がった。そして、「英語が大好きな自分たちが、日頃からどのように英語を学んでいるのかを伝えることで、生徒自身が楽しく英語を学ぶことにつなげたい。そうして、生徒が主体的に課題に取り組むことで、自律的な学習者になってほしい」と、従来の課題をやめて新しい課題へと方向転換した。

生徒が自分で選んで取り組む課題への転換

まず、生徒たちには下表のような夏休み課題が「英語科通信」で提示された。

共通課題には全員が必ず取り組み、選択課題は具体例で示されている内容を参考に、生徒自身が、興味・関心のある分野の学習、弱点を克服するための学習、得意なことをさらに伸ばすための学習など、自分で課題を設定して3週間かけて取り組む。しかし、取り組んだ課題の提出は必須とはしていない。今回の課題の評価は点数化をせず、コメントを付けてポジティブなフィードバックをすることで、生徒のモチベーションへとつなげることをねらった。

ただし、夏休み明けの課題考査では、Writingで「私が夏休みに取り組んだ英語学習」をタイトルに、60〜80語の英作文を書かせることとした。生徒たちには夏休み課題とともに課題考査の出題範囲が示されており、自ら設定した課題とその取り組みについて英語で記述できるように準備をして臨む。

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《夏休み課題》
夏休みは自分で課題を設定して英語を学習することに挑戦します。
共通課題の他に「伸ばしたい英語力」「時間があるからできること」を考えて課題を設定します。

生徒が前向きに英語と向き合った

「本当にこのような課題を出してもよいのか」「何が提出されるのか」「考査の英作文には、どのようなことが書かれるのか」と不安はよぎった。だが、とにかく生徒を信じた。日頃の授業で教科書を題材として、理由や例示をしながら自分の意見を述べ合う表現活動をしているのだから、生徒たちならできるはずだと。

そして、自分で課題を設定して取り組むことに生徒たちの驚きはなかった。実際、課題考査の英作文には生徒たちの達成感がにじみ出ていた。「英語の勉強の仕方がいろいろとあると分かった」「この学習法を続けたい」「友達にも勧めたい」といった記述が多く見られた。なかには、1学期に教科書で学んだ比較の表現を、“It was more interesting than I had expected.”のように、自分の考えを伝えるために使えるようになった生徒もいた。

同校では、冬休みにも同様の課題を提示するため、提出された課題を参考例として、「英語科通信」などでシェアし、授業では生徒同士で自分が取り組んだ課題について伝え合う活動をする予定だ。そうすることで今回は満足のいく取り組みができなかった生徒も、冬休みには工夫して取り組むはずだ。繰り返し取り組むことで、生徒たちが意欲的に英語と向き合い、主体的に学びを深めていくことを期待している。

「中学校でも、進学校でも、そうでなくても、どのような学校であってもできる課題だと思います。生徒を褒めることもでき、生徒たちの学びに感動します。勇気を出して課題を変えて良かったと思います。教員が一歩を踏み出すことの大切さに気付かされました」と先生方は口をそろえた。

【生徒の選択課題の実例】

《Writing》ホームステイ中の記録

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カナダ・バンクーバーでの15日間のホームステイ滞在記。天気・気温、食事の内容やその日の経験を、毎日英語で書き記した。日々記録してきた内容のサマリーもまとめた。多くの友人ができて楽しく、かけがえのない経験ができ、ホストファミリーとも楽しい思い出ができたことをつづった。

● 取り組みの良かった点
毎日継続的に、A5ノート1ページ分の英語を書くことに挑戦しています。生活体験のなかで学んだ英語を整理しながら書くことで、自分の言葉として英語を習得できています。

 生徒の変容
15日間、毎日英語で日記を書く体験は、自信となりました。授業内での表現活動でもより積極的に授業に取り組んでいます。

《Reading》多読

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夏休み中に読んだ英語の本の要約や和訳をしたり、分からない単語を書き出したり、理解した内容をイラストで表現したりするなど、個々の創意工夫が見られる。なかには絵本『さるかに合戦』の日本語版と英語版を読み比べて、擬態語の表現の違いに気付いた生徒もいた。

● 取り組みの良かった点
イラストで話の流れを描く、英語で要約を書く、日本語で100字要約を書くなど多様な形式で洋書を読んだ内容がまとめられています。1年次に多読の活動に取り組んだ際、読んだ内容をまとめる方法について授業のなかでモデルを示したことが、夏休み課題への取り組みやすさに結び付きました。

 生徒の変容
2学期になり夏季課題考査が実施される日のSHR前の時間、洋書を読んでいる生徒の姿がありました。考査に向けて問題集を解くのではなく、読書を楽しんでいる様子に変容を感じました。

《Speaking》洋楽を歌えるようになるまでの記録

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Maroon5の『Sugar』や『What Lovers Do』を歌えるようになるまでの日々の記録。0.75倍速で聞いて口ずさむことからスタートし、日を重ねるごとにできるようになったことが見えてくる。「ラキナ」と歌っているように聞こえていたところが、歌詞を見たらLucky or notであったことに気付いて驚いたことなど、英語の音のつながりを意識するようになっていく様子が分かる。

● 取り組みの良かった点
1曲を歌えるようになるまでの過程が書かれているので読み手にとっても楽しい課題作品でした。

 生徒の変容
生徒は「この課題に取り組んだことで、リスニングは大丈夫という自信を感じている」と話しています。「主体的に学ぶ姿勢」の先には必ず「自信」があります。

《Reading》理系論文を読む

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理数科の生徒が、日頃から取り組んでいる探究活動のテーマに関連する先行研究の論文を探して辞書を引きながら読み、サマリーをまとめた。

● 取り組みの良かった点
自分の興味のある分野について辞書を引きながら先行研究を読み切りました。データや研究テーマへの考え方が詳しく書かれていたので、自分の研究に参考になったそうです。

 生徒の変容
論文で読んだ単語やフレーズは、自分の課題研究についてポスターや発表原稿を作成する際にとても役立ったそうです。マレーシア研修(10月)では英語での研究発表に挑戦しました。

《Writing》洋画を視聴しレビューを書く

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洋画『レ・ミゼラブル』を英語字幕を表示するなどして繰り返し視聴し、感じたことや理解したことについてレビューを英語で書いた。

● 取り組みの良かった点
好きな映画を英語で繰り返し視聴したり、英語の字幕で視聴したりと、生徒によって多様な取り組みが報告されました。セリフが聞き取れた時にもっと聞けるようにリスニング力を伸ばしたいという欲求が生まれたようです。

 生徒の変容
テレビでも英語でドラマを視聴することが好きになったようです。ネイティブ同士の速いやり取りでも、話されているセリフが聞き取れる、状況が理解できるとうれしいし、自分のリスニング力が向上していると感じているそうです。

《Writing》単語学習

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単語をイメージするイラストを添えて、単語と意味を書き記した。英語での定義付けをする生徒もいた。

● 取り組みの良かった点
英単語をイメージで捉え、イラストやフレーズで表現することで習得しようと試みています。1冊の英単語帳が仕上がりました。

 生徒の変容
「前に担当の先生から教わったこの方法で続けた。英語をシンプルにイラスト化しようと考える過程で、より印象に残るのだと思う」と生徒は述べています。以前は、ノートに単語をひらすら書くという方法で単語を覚えようとしていたそうですが、今後はこの方法で語彙を増やしたいそうです。

《Writing》英検準1級・入試問題ライティング問題

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英作文が好きな生徒は、英検や入試問題などのライティング問題に取り組み、トピックに対する自分の考えを英語で表現することに取り組んだ。分からない単語はマーカーで着色して意味を添えるなどの工夫もしている。

● 取り組みの良かった点
英作文を書く力を向上させたいと考え、「夏休み中に30問英作文に取り組む」という目標を設定し取り組みました。英検準1級の過去問題や入試問題などからさまざまなテーマについて賛成・反対の立場を明確にして理由を述べています。

 生徒の変容
英作文を書くことや模範解答を読むことから語彙を増強することができ、達成感を感じているようです。英検準1級に挑戦する予定です。

《Writing》ハーバード大学 サマーセミナー

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英検1級レベルの英語力を持つ生徒が夏休み中に参加した、ハーバード大学のサマーセミナーでの学びと経験を英文でまとめた。

● 取り組みの良かった点
海外進学を視野に入れていることもあり、自分から「ハーバード大学サマーセミナー」に申し込みをするなど、意欲的に英語をツールとして学ぶことができています。

 生徒の変容
普段取り組むことができないことを課題として設定しました。そしてその課題に挑戦したことで、進路実現に向けての気持ちがさらに高まっています。

 

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