「英語で英語を教える授業」というと何やら難しそうに聞こえますが、英語そのものは器であって、器に入れる、つまり表現する「中身」はどんなものであってもよいので、決して難しいことではありません。Small Talkでは、その「中身」を生徒にとって興味あるものにして、彼らが積極的にコミュニケーションすることを促します。教師には上手な素材選びと、それを上手に料理する能力が求められます。まるでシェフのようですね。

今回のトピックは「コアラの日」です。さて、この素材はどのように料理することができるでしょうか?

【展開例】 太字部分の質問は、ペアでお互いに質問させます。

T: What do you imagine when you hear the word “Australia”?

- What do you imagine when you hear the word “Australia”?

T: S1, What do you imagine when you hear the word “Australia”?

S1: I imagine the Opera House in Sydney.

T: How about your partner. What does she imagine?

S1: She imagines koalas.

What do you imagine when you hear the word….? という質問は、これまでのSmall Talkで何度か使ってきました。実際の授業でも、導入後に何度か使ってきた表現を用いると、生徒は問題なく反応してくれます。「積み重ね」による「定着」です。このように、1年間の授業を「点」としてではなく、「線」として考え、「積み重ねによる定着」を意識しましょう。

9月の最終金曜日は、世界コアラ基金が制定した「コアラの日」です。今回はコアラについて英語で考えていきます。「コアラ」という素材を使って生徒が持っている様々なものを「引き出し」ます。

T: This year the last Friday of July, which is July 24th, is the National Sports Day. How about the last Friday of September? It is Save the Koala Day. Together with the kangaroo, the koala is one of the symbolic animals of Australia. What do you know about koalas?

- What do you know about koala?

T: S2, what do you know about koalas?

S2: Koalas live only in Australia.

T: That’s true. What does your partner know about koalas?

S2: She says koalas have big ears and a big nose.

T: That’s also true. S3, what do you know about koalas?

S3: Mother koalas have their baby in their stomachs.

T: No, no. Not in stomach but in her pouch. A baby koala stays in its mother’s pouch for five months. Yes, the koala is a marsupial animal. The kangaroo is a marsupial animal, too. S4, what do you know about koalas?

S4: Koalas move slowly.

T: Actually, it’s not true. Surprisingly, koalas can run as fast as rabbits.

What do you know about ...? という表現は便利なもので、トピックについて生徒それぞれがもっている情報を引き出すことができます。そして、やりとりのなかで、それぞれの情報が英語でどのように表現されるかを共有するとともに、さらに新たな情報をも交換します。ここでは、意外にもコアラは走るのが速い、という新たな情報を共有しています。新たな情報、つまりプラスワンの情報がないとやりとり自体が予定調和になってしまって「面白く」なりません。


marsupial などという単語を中学生や高校生が知っているはずはありません。しかし、この例のようにコンテクストを設定して導入すると、生徒が戸惑うことはないはずです。日本語を話していても、相手が知らない単語を話すことはあるのですから。そんな場合は、この展開例と同じく、コンテクストから意味を推測するはずです。実際、生徒はmarsupialという単語を覚える必要はありません。大切なのは、コミュニケーションのなかで知らない単語の意味を推測し、学ぶ経験を与え、その力をつけてやることです。

T: Interestingly, the koala is not the national animal of Australia. The national animal of Australia is the kangaroo. The emu is also a national animal of Australia. The national animal of Korea is the tiger. The national animal of China is the giant panda. What do you think the national animal of Japan is?

- What do you think the national animal of Japan is?

T: S5, what do you think the national animal of Japan is?

S5: I have no idea.

T: Then, what does your partner think the national animal of Japan is?

S5: He guesses it’s the crane.

T: Well, the national animals of Japan are the green pheasant and the carp. It’s surprising, isn’t it?

今回は使わせる英語そのものに難しいものはないので、特にリズムよく情報のやりとりを進めたいところです。その分、面白さは担保しなくてはなりません。コアラがオーストラリアの国獣でない、あるいは日本の国獣が鳥と魚であることを知ると生徒は「へぇ」と反応してくれると思います。

最初に教師の仕事がシェフのそれに近いことについて触れましたが、このような場合も同じで、教師は生徒が「へぇ」と思うようなトリビアを予め仕入れて、仕込んでおく必要があります。小さなことに思えますが、「面白さ」が授業の命なので、実はトータルでは大きな仕事なのです。シェフも素材のひとつひとつに下味をつけたり、隠し味を使ったりして、小さな努力を重ねてトータルで美味しいものを作ります。

今回は World Koala Dayをトピックとした展開例をご紹介しました。これを例として、自分のクラスでの展開例を考えてみてください。次回は、このやり取りについて、さらに展開例を示しながら、この活動の意図と目的について考えます。

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