大分県教育庁義務教育課
指導主事 田代 和馬 先生

1.はじめに

 新型コロナウイルス感染症の影響により、これまでと生活様式が変わり、先生方は学校現場で多忙な毎日を過ごしています。子供たちの学びを保障するため、最前線で活躍する先生方を支援することができるよう、指導主事が力を発揮する必要があると感じています。また、令和2年度から小学校、令和3年度から中学校が新学習指導要領の全面実施を迎え、育成を目指す資質・能力の明確化や学習内容の改善・充実、指導と評価の一体化の推進など、新学習指導要領の趣旨の実現という観点からも、指導主事の果たす役割は大きいと感じています。
 大分県では、こうした状況に対応するため、児童生徒の英語力育成及び教員の確かな指導力向上につながる取組を行っています。本稿では、その取組の一部をご紹介します。

2.大分県の英語教育の現状について

 文部科学省が実施した、令和元年度「英語教育実施状況調査」の結果と、大分県内の公立小学校が回答した令和元年度の校内研修アンケート結果から明らかになった、大分県の小学校及び中学校における英語教育の現状は次のとおりです。

① 中学校:生徒の英語力の状況(令和元年度「英語教育実施状況調査」の結果より)
 文部科学省は、第3期教育振興基本計画(2018-2022)において、卒業時までに中学校でCEFR A1(英検3級等)以上相当の生徒の割合を50%以上とすることを目標にしています。全国的な状況からすれば、その割合がR1:42.6%→R2:44.0%となっており、生徒の英語力指標は上昇しています。
 ところが、大分県ではR1:39.5%→R2:38.2%となっており、生徒の英語力向上に向けた指導方法の工夫・改善を推進していく必要があります。

② 中学校:「CAN-DOリスト」形式の学習到達目標の設定状況について(令和元年度「英語教育実施状況調査」の結果より)
 大分県では、県内すべての公立中学校において、「CAN-DOリスト」形式の学習到達目標を設定しています。しかし、学習到達目標について、達成状況を把握していると回答する学校はR1:63.4%→R2:54.2%に減少しています。全国的な状況と比較すればR1:49.2%→R2:49.9%となっており、高い値を示してはいますが、卒業時や学年末を見据えて作成した「英語を使って何ができるようになるか」を示す目標の達成状況を振り返ることなく、作って終わりとなってしまっている学校が約半数あるということが分かります。新学習指導要領の趣旨を実現するためには、学習評価を真に意味のあるものとし、指導と評価の一体化を推進していく必要があると感じています。

③ 小学校:英語指導に対する教員の意識について(令和元年度「校内研修アンケート」結果より)
 大分県では、平成30年度より、新学習指導要領の全面実施に向けて「新教材活用研修」「小学校英語指導手引き」の作成などを中心に「小学校英語教育推進事業」を展開してきました。その一環として、県英語担当指導主事が校内研修の講師を務める「出前研修」を行うなど、各学校の英語教育に関する校内研修を支援してきました。校内研修を実施した結果、先生方が英語指導に対してどのような意識なのかを調べてみると、「ある程度自信をもって指導できる」と回答した教員の割合は、34.8%でした。先生方が自信をもって英語指導を行うことができるよう、引き続き支援をしていく必要があると感じています。

3.中学校における英語教育の充実に向けて 

 大分県では、生徒の英語力育成と教員の確かな指導力向上を目指して、令和2年度より「中学校英語科授業力パワーアップ研修」を実施しています。 

  【目的】授業研究や講義、演習等を実施し、新学習指導要領の趣旨を踏まえた授業づくりについて理解
      を深めるとともに英語科教員の授業力向上に資する。
  【対象】中学校英語科全教員(中核市である大分市を除く)
  【方法・内容】
    ① 第1回:WEB研修(令和2年7月~10月)
     ※ 新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、本来は集合型研修で行う予定であったものを
       WEB研修に変更。
     〇 単元づくり・授業づくりのポイントとして「単元を通して付けたい力を育成」「バックワード・
       デザイン」「言語活動の充実」「ALTとの連携・協働」の4つを重点的に取り扱い、県教育委員
       会がスライド(動画)を作成して県WEBサイトに公開。
     〇 対象者は自分の好きな時間に受講し、学んだことをもとに単元プランを作成。(資料1)
     〇 作成した単元プランは、教育事務所または市教委の英語担当指導主事が添削し、対象者にフィー
       ドバック。
    ② 第2回:集合型研修(令和2年10月~12月)
     〇 WEB研修で作成した単元プランをもとに、県内各地区で公開授業を実施し、授業づくりについ
       て協議。
     〇 指導主事より、授業に対する指導助言を行うとともに、新しい学習指導要領における学習評価に
       関する行政説明を実施。

        (資料1:WEB研修後に参加者が作成した単元プラン)
◉1

4.小学校における英語教育の充実に向けて 

 大分県では、児童の英語力育成につながる教員の確かな指導力向上を目指して、令和2年度より「小学校英語指導研修」を実施しています。

   【目的】新学習指導要領における外国語活動及び外国語科の趣旨並びに英語指導に関する説明・講義・演
       習を行い、これからの英語教育について理解を深めるとともに、小学校教員の指導力向上に資す
       る。
   【対象】各小学校から教諭等1名以上、希望する英語専科教諭、希望するALT等
   【方法・内容】
      〇 各教育事務所単位で年間1回実施。
      〇 内容は、義務教育課または教育事務所指導主事による行政説明(資料2)及び各地域の英語教
        育推進リーダーによる講義・演習。

        (資料2:小学校英語指導研修行政説明資料の一部)
スライド1-1

スライド2-1

   〇 英語教育推進リーダーによる講義・演習の内容(一部)
    〈外国語科における教科書の活用〉
     ・教科書は、Unit及び1単位時間の授業展開がほとんど同じ構成となっているので、教師も児童も
      単元や授業の見通しをもつことができる。一方で、教科書をそのまま使用するだけでは、児童が
      受け身の授業になりがちになることから、児童の発話の機会を充実させ、アレンジを加えて言語
      活動の充実を図ることが大切になる。
     ・年間指導計画を受けて、各単元において、どの領域に関する記録に残す評価を実施していくのか
      を検討し、学期末または学年末に向けて学習評価の見通しをもつことができるよう、評価計画を
      立てておくことも大切になる。
    〈実践的な指導方法〉
     ・児童に新しいフレーズを導入する際には、場面を設定したうえで明確なデモンストレーションで
      児童に状況を示し、非言語情報も交えて児童に伝えるロールプレイを活用する。
     ・初期段階の文字の読み書きについては、アルファベットカードを使った神経衰弱等による大文字・
      小文字のマッチングや、hとnなどよく似た文字の空書きなどが有効である。

5.おわりに

 3で紹介した「中学校英語科授業力パワーアップ研修」について、大分県内の中学校英語科の先生方から提出された単元プランを見ると、資料1で紹介したもの以外にも「地域の外国の方々に学校新聞を読んでもらう」「授業・学校行事・部活動などについて経験したことなどをまとめて思い出文集を作成する」など、生徒の学習意欲を喚起し、目的意識や相手意識を大切にして言語活動の充実を図ろうとする学習活動がたくさん見られました。
 また、4で紹介した「小学校英語指導研修」においても、令和2年度から小学校外国語科において初めて使用することとなった教科書をうまく活用する事例や、教科書の内容を児童や地域の実態にあわせてアレンジし、言語活動の充実を図った年間指導計画を見ることができました。
 このような好事例を収集・還流したり、新学習指導要領の趣旨の実現につながる効果的な研修をさらに充実させたりすることにより、児童生徒の英語力育成と教員の確かな指導力向上にむけて、一歩ずつ前進していきたいと思います。

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