投稿日:2022/04/05

【中学校・高等学校の先生からのご質問と回答】英語教育オンラインセミナー2021

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2021年12月26日、全国の小・中・高等学校および教育委員会で英語教育に携わる先生方に向けたセミナーを開催し、ご参加のみなさまからパネルディスカッションで取り上げてほしいご質問を募集しました。今回はパネルディスカッションで取り上げられなかったご質問について、パネリストの池田先生・阿部先生にご回答いただき、記事にまとめました。

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●ご回答いただいた先生 ※ご所属・肩書はセミナー開催当時のものです。
阿部 雅也 先生(新潟経営大学 経営情報学部 准教授)に、中学校・高等学校の先生からいただいたご質問にご回答いただきました。

中学校・高等学校の先生からのご質問と阿部先生からの回答

Q.中学校での主体的な学びについて

 主体性を育むために、目的があることが大切であると思います。目的として、 Lesson Goal や Today's Goal があるかと思いますが、そこでの文言をどのようにしたらよいでしょうか。

例① 友達に自分の好きな音楽とその理由を紹介しよう。
例② まとまりのある英語で発表しよう。

 例①は内容面から、例②はCAN-DOに基づいた言語面からの目標になるような気がします。生徒が主体性を発揮するといったときに、自分の好きな音楽を伝えようとすることなのか、まとまりのある英語を話そうとすることなのか、二つは重なっているとは思うのですが、まだ整理されていないところがあります。両方とも意識することが生徒の主体性につながってくると思うのですが、だからこそ、Lesson Goal や Today's Goal の据え方に迷っているところです。
 また、単元のゴールはほぼ発信だと思うのですが、その単元においては、聞くことや読むことが評価する単元もあると思います。そういった時に、生徒が「この単元において、概要を読み取れるようにするために必要なことは…」と自覚して、主体性を発揮することができるのか、という悩みもあります。 Lesson Goal とすれば、内容面では発信型、言語面では、読むことというずれも出てきてしまうかと思います。
 また、英語科でいう対話的な学びとは、どのような学びを指しているのか。例えば、友達とやり取りをした際に、「そういう考えもあるのか」とともに、「そういう表現があるのか」といった気付きがあるかと思います。両方とも大切だと思います、片方だけであった場合も対話的な学びと言ってよいのでしょうか。
長くなってしまい、意味が伝わらない箇所もあるかと思いますが、よろしくお願いします。すみません。

Answer 

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 先生がおっしゃる通り、児童生徒の主体性を育むためには、教科の「見方・考え方」を働かせつつ、日々の言語活動が目標と紐づけられていることがとても重要になるかと思います。「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料(以下、「参考資料」)(中学校編)」p.48には、次のような単元の目標設定が例示されています。「友達の意見等を踏まえた自分の考えや感想をまとめるために,野菜の歴史について書かれた英文を読み,読んだことを基に考えたことや感じたことを,英文を引用したり内容に言及したりしながら伝え合うことができる。」ここには、単元の題材としての「野菜の歴史」という内容面に加えて言語面も盛り込まれていることが分かります。これは3課を通じた目標のうちの第1課の目標という設定でしたが、第2課では「理由とともに伝え合う」、第3課では「理由とともに伝え合い,やり取りを継続する」と単元が進むにつれて、内容は変わるけれども、言語面の目標は相互に関連しながら徐々にレベルアップしています。
 
 そして3課を通じた目標を「友達の意見等を踏まえた自分の考えや感想などをまとめるために,日常的な話題や社会的な話題(野菜の歴史,世界遺産,リサイクルなど)について書かれた文章を読み,読んだことを基に考えたことや感じたこと, その理由などを伝え合うことができる」としています。このような力の育成には長い時間がかかるので、先生があげられた内容面、言語面の両面が必ず関わってくるものと思います。また、児童生徒の気づきもそれぞれですので、4技能5領域を統合した言語活動を地道に継続することによって、児童生徒は対話の中で自己選択しながら自然と活用することを覚え、徐々にではありますが児童生徒の中に主体性が育まれるのではないでしょうか。
 そのことが、「参考資料(中学校編)」p.54-55にも、パフォーマンステストに至るまでの指導事例として示されており、そのような力を複数の単元を通じて有機的に関連付けながら少しずつ指導していくことが我々英語教師に求められています。これらも踏まえますと、内容・言語の両面からの指導と評価を英語科チームで話し合い、①内容面の適切さや②言語面の正確さなどを、学期や単元を通じた様々な機会を活かして、徐々に身につけさせる計画を立てられてはいかがでしょうか。


Q.高等学校での評価・成績の付け方について

 現在本校では、成績をつけるための評価項目で、定期考査の比重が7割、パフォーマンステスト1割、単語テスト1割、課題と授業観察が合わせて1割となっていますが、結局定期考査までに計画的に勉強し、暗記することが得意な生徒が、高い成績を取るようになっていて、英語の力を測りきれていないと感じています。
 どのような成績のつけ方をすればよいか悩んでいるので、アドバイス頂けるとありがたいです。

Answer

 「暗記することが得意な生徒が、高い成績を取るようになっている」とのことですが、テスト問題は、理解した内容や覚えた知識そのものを試す問題だけになっていませんか。また、授業は教科書の内容理解や知識の習得がゴールになっていないでしょうか。
 学習指導要領が学校種別で段階的に実施されており、小中学校で既に実施されている観点別評価が、2022年度からはいよいよ高等学校でも必須になります。「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料(高等学校編)」も国立教育政策研究所教育課程研究センターから発行されました。文部科学省の調査によると、指導要録に観点別学習状況を記載している高校はこれまでは13.3%にとどまっていたようですので、多くの学校でかなり大がかりな変更が必要になっていることと思います。すでになされているとは思いますが、少なくとも前年度中には教務委員会など教科の枠を超えた組織的な取り組みとして、評価に関する共通理解と仕組み作りをしておく必要があります。そこをスタート地点として、英語科では評価に関して何を話し合うべきかと言うことになります。

 前置きが長くなりましたが、頂いたご質問への回答です。年間の指導と評価の計画から学期や単元の評価に落とし込み、それを英語科チームで共通認識しておく必要があります。そこでのポイントは、指導の改善(4技能5領域を統合した言語活動の充実)とセットで話し合い、指導と評価を一体化していくことです。
3観点のうち、「知識・技能」では、知識の理解や習得を問う問題だけでなく、実際にそういった知識・技能を用いる場面を授業で作って、そのような知識を活用する力、つまり「…する技能を身につけている」かどうかを、ペーパーテストやパフォーマンステストなどで評価します。また、「思考・判断・表現」においても知識及び技能を活用して課題解決するための力が身についているかどうかを、発表や作品、パフォーマンステストなど、実際のコミュニケーション場面を通じて評価していきます。
 指導と評価はコインの裏表、つまり評価方法を変えていくに当たっては当然のことながら指導も、知識や理解だけでなくその活用を中心としたものに大きくシフトする必要があります。そう聞くと大変なことになったと思われる方もいるかもしれませんが、観点別評価を導入することで得られる恩恵があります。これまでに、こんなジレンマはなかったでしょうか。「発表場面で暗記した原稿をスラスラと答える生徒にはAがつき、一方、深く思考しながらいいことを伝えようとしているのに、英語の小さなミスが多い生徒にはどうしてもBしかつけられない…。」こんな悩みが、3観点評価によって解消されます。つまり、後者の生徒にも「知識・技能」はBだが、「思考・判断・表現」では「内容を適切に伝えている」のでAを、「主体的に学習に取り組む態度」でも「適切に伝えようとしている」ということでAをつけられるということになります。私はこの3観点導入でコミュニケーションに粘り強くチャレンジする多くの高校生が救われることと信じています。実際のコミュニケーションでは表現の正確さだけでなく、その場面における内容の適切さがとても重要になります。もしかしたら、先生の「英語の力を測りきれていない」というお悩みも、これで解消されるのではないでしょうか。
 新潟県のプロジェクトでは、中学校のこれまでの観点別評価の実践から学ばせてもらう研修を行って、学校種を超えた評価に関する学び合いを深めています。そこでの最近の学びをご紹介します。評価を行う目的は大きく2つあって、一つは生徒のやる気に火を灯すため、そして教師が自分の指導を見つめ直すためです。ご参考にしていただければ幸いです。


Q.中学校での授業の作り方・振り返り活動について

話し合いの中で、「単元を通した目標を持つことが大切」だということが、改めて再認識できました。
『単元を通した目標を設定する際に、その目標が子どもが興味を持って取り組みたい』と思う目標を設定するためにはどのような視点で教材や教科書を考えてみると良いですか?『目標設定のコツ』のようなものを知りたいです。

Answer

 先生が今回のグループディスカッションで気づかれた通り、児童生徒が目的意識を持って主体的に学習するようになるためには、日々の授業で明確な目標を持って学習する経験を積み重ねることが大切です。そのために各学校の実情を踏まえつつ、卒業時につけて欲しい資質・能力から、2年次、1年次と逆算し、単元の目標へとバックワードに目標を落とし込んでいきます。

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 単元の目標設定のもう一つの方向性として、単元の英文素材の特長や面白みを活かして、中心となる言語活動を設定し、それを単元目標とつなげることが挙げられます。素材のどんなところを児童生徒に味わって欲しいか、各セクションの理解のポイントはどこか、発問と予想される児童生徒の反応などを想定し、教科書の素材を活かす活動を考えながら、単元の大きな言語活動やパフォーマンスを設計して目標とつないでいきます。教科書を読んだ時に、このように素材を活かした授業作りのアイデアが浮かんでくるかどうかが、教師の腕の見せ所です。

 ところで先生は、日々の授業にワクワクしていますか?単元の目標を作成する際にはその目標とつなぐための指導計画も同時に考えることになると思います。教科書の素材を活かした単元の中心となる言語活動や発問を考える際には、コミュニケーションの目的や場面、状況など英語科の「見方・考え方」を働かせることが一つのポイントになります。例えば言語活動の指示で、話し手はどういう立場の人で、どんな相手にどんな場面で伝えようとしているのかを詳細に設定することで、児童生徒のイマジネーション力をくすぐるように工夫します。その他のポイントとしては、児童生徒の身近な生活や将来と関わるような話題であったり、学校行事や実在の人物を扱うなどタイムリーでオーセンティックな課題とすること、そしてタイミングの良いグッドモデルの提示や、緊張感・臨場感が感じられるような発表場面の演出など、活動中の支援の工夫が考えられます。児童生徒がついついやってみたくなる活動になっていれば、児童生徒も提示される目標にワクワクするようになるでしょうし、児童生徒だけでなく教師も、授業開始のチャイムが待ち遠しくなるのではないでしょうか。



>小学校の先生からのご質問と回答(池田先生)はこちら

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