英語は「ことば」ですので、同じ語句や表現を何度も繰り返し使いながら習得していきます。例えば “I want to be a scientist.” のように「なりたい職業を伝える」ための表現は、小学校と中学校両方の教科書で扱われています。ですが小学校と中学校では、同じ表現を言語活動で取り上げるにしても、その扱い方が違うのです。
例えば、小学校3年生用教材Let’s Try! 1のUnit 4“I like blue .”を見てみます。“I like ~.” “I don’t like ~.” “Do you like ~?”といった表現を使って「好きな色、食べ物、スポーツなどを英語で尋ねたり伝えたりできるようになる」ことを学習到達目標とします。
まず指導者が色カードを示して“I like pink and purple, but I don’t like blue.” などと言い、好き嫌いを表情やジェスチャーで伝えながら基本表現を導入します。「Iが主語で、likeが動詞で・・・」と説明したり、最初から黒板に文字で単語を示したりはしません。あくまでも “I like ~.” の「~」の部分に「自分の好きなもの」、“I don’t like ~.”では「好きではないもの」を続けるという「表現のまとまり」として、音声を繰り返し聞いたり言ったりして慣れ親しませます。
語句や表現を導入したら、Activity 1「にじに色をぬって、あなたのにじをかんせいさせよう」という活動に取り組みます。これは虹の絵に色を塗り、完成した虹を“I like ~.”の表現を使って英語で友だちに紹介するものです 。
実はこの活動では「あなたの虹を完成させる」、すなわち「自分だけの虹とするために、自分の好きな色で自由に塗るんだ」という目的設定が非常に重要です。虹を実際の色に合わせて塗り、「自分の好きな色ではない」けれど“I like ~.”と言いながら紹介するのでは、「本当の自分の気持ち」を伝えることにはなりません。「自分の好きな色で塗られている」からこそ、例えば “I like pink. I like purple. I like orange. I like yellow.”と言いながら自分だけの虹を紹介する、「意味ある活動」となるのです。
◆5年生「外国語」の例
高学年「外国語」については、新学習指導要領の移行期間に用いられていた5年生用教材 We Can! 1の Unit 2 “When is your birthday ?”を取り上げます。今年度から使用されている「外国語」検定教科書の多くに、これと同じような単元が含まれています。学習到達目標は、単元名が示すように「誕生日を尋ねたり伝えたりできるようになる」ことです。
これまでの小学校や中学校の授業では、“When is your birthday?”と“My birthday is ….” の表現を導入したら、「ではみんな教室内を歩き回って、友だちに英語で誕生日を尋ねてみましょう。何人に尋ねることができるかな?」といった対話練習が多く行われてきました。しかし同じクラスだからこそ、既に互いの誕生日を知っているかもしれない中で、なぜまた英語で尋ねるのかという「目的」が明確ではありません。
そこでこの単元では、既習表現の“What do you want?”とうまく組み合わせ、かつ高学年では「書くこと」の領域も扱うため、「友だちに、その人がプレゼントに欲しいもののイラストとメッセージを添えたバースデーカードを贈る」という言語活動を行います。すなわち、「バースデーカードを贈りたい人がいる」という状況設定のもとで、まずメッセージに書き添えるために誕生日を尋ね、さらに「誕生日に欲しいもの」を“What do you want for your birthday?”を用いて尋ねるのです。
もし友だちから、“I want a T-shirt.”という答えが返ってきたら、カードにどのようなTシャツのイラストを描くかを絞るために“What color do you like?”“What shape do you like?”などと色やデザインの好みを詳細に聞き取ります。
そして“Happy Birthday!”というメッセージや誕生日の日付を「例を見ながら」書き写し、最後に友だちと自分の名前をローマ字で書いてカードを完成させます。それを“This is for you.”と言いながら、心を込めて相手に渡すという流れです。