英検を道標に英語4技能を習得し、臆せず話せる力を身につける
株式会社 市進
代表取締役社長
三木 健二 氏
同 取締役
教育DX・社外連携戦略統括担当
児玉 修昌 氏
受験はゴールではなくスタート。
合格の先を見据えた教育で、人を創る
1965年の創業以来、市進教育グループ(以下、市進)では「人を創る」を理念に掲げ、学習塾・予備校事業を中心に教育総合サービスを提供してきました。なかでも市進では、首都圏を中心に、市進学院、市進予備校、パンセフロンティエル、個太郎塾などを展開し、小学生から高校生までを対象に集団授業・個別指導・オンライン授業を提供しています。現在はグループ全体で4万人弱の生徒を預かり、「めんどうみ合格主義」をモットーに、成績アップと志望校合格のために生徒一人ひとりに寄り添うきめ細かな指導を実践しています。同時に、生徒の自立を促す指導も徹底してきました。受験はゴールではなくスタートであり、志望校合格を全力でサポートしつつ、合格の先を見据えた教育にも力を入れる。これを60年間、実直に守ってきた塾であると自負しています。
市進では創業当時から英語教育に力を入れており、カリキュラムでも英語の授業時間数が他教科に比べて多くなっています。その背景には、入試で求められる英語力だけでなく、グローバル化を見据えた真の英語教育をすべきであるという、市進グループ塾共通の思いがあります。この思いを引き継ぎ、英検などを活用しながら基礎となる英語の4技能をしっかりと身につけたうえで、最終的には英語で堂々とコミュニケーションがとれるようになることを目標にしています。一例を挙げると、塾での指導ではどうしても手薄になりがちな「話す」を補強するため、AIを搭載した音声認識ソフト(アプリ)を使い、生徒がいつでもどこでもスピーキングのトレーニングができるようにしています。また、当社が運営を担うTOKYO GLOBAL GATEWAY(TGG)※に小学5・6年生(中学受験コースを除く)を年2回招待し、身につけた英語の技能を実際に使う体験をしてもらっています。子どもたちには、物怖じせず話すという姿勢の部分も含めて、社会に出てからも役に立つ英語力を身につけてほしいと願っています。
※TOKYO GLOBAL GATEWAYは、東京都教育委員会と(株)TOKYO GLOBAL GATEWAYが提供する体験型英語学習施設。館内には海外をイメージして作られた街並みが広がり、日常とは異なる環境のなか、英語を使いながらグローバルな世界を体験できる。
目標級を目指した学習を通して、
4技能をバランスよく身につけられる
通常の英語のクラスについては、学年に合わせた指導に加えて無学年制の要素も取り入れ、得意な子はどんどん伸ばし、そうでない子も自分のペースでステップアップできる体制をとっています。具体的には、高校2年生までに習う単語を18段階にレベル分けし、テストに合格したら次のレベルに進めるようになっています。レベルは英検にも準拠しており、一つひとつクリアすることで達成感が得られ、英語学習のモチベーション維持にも役立っています。
市進では、高校3年生の1学期までに英検準1級を取得することを推奨しており、多くの高校生が英検を受験しています。また、高校受験用のカリキュラムでは、中学3年生の段階で英検準2級程度の英語力がつくようになっており、中学生にも英検を目安にしながら英語力を伸ばす指導を行なっています。さらに、小学校で英語が始まり、最近は小学生の英検受験者も増えています。
昨今は、大学入試、高校入試、さらに中学入試においても、英検の活用が進んでいます。英検を取得しておくと入試で有利になるという認識は、生徒たちの間にも浸透しつつあると感じています。入試に役立つという側面はもちろんありますが、目標級を目指して学習することを通して4技能をバランスよく身につけられること、着実にステップアップしていくための道標となることが、英検に取り組む最大の価値だと考えています。それが結果として入試にも役立つのであれば、活用しない手はない。そのように生徒たちにも伝えています。また、市進では通常のコースのオプションとして「英検対策講座」を開講しており、これが外部から問い合わせをいただくきっかけになっています。対策講座の受講が入塾につながるケースもあり、集客面でも一役買ってくれています。
英検プレテストをステップに、
より多くの生徒に英検に挑戦してほしい
「学習者の実用英語の習得に寄与する」という共通理念のもと、市進は2024年に英検とプラチナパートナーシップを結びました。これにより英検プレテストの活用が進み、現場の担当者にも保護者にも大変好評です。英検プレテストの結果は、スコアだけでなく各種データや分析を添えて英検からフィードバックされます。詳細なフィードバックがあることで、今の英語力がどのレベルで、どこができていてどこができていないかが明確になり、英検の受験級の目安や対策の指標になるのはもちろん、講師から生徒や保護者に現在の英語力の状況を共有する、コミュニケーションの材料となっています。
また、「落ちたくない」という思いから英検受験を避ける生徒も少なくないなか、プレテストを受けることで自信をもって英検に臨めるようになる、英検受験へのハードルが下がるというメリットもあります。低年齢のうちから定期的にプレテストを受験することで、英検への挑戦を通してステップアップしていくという英語学習のスタイルがより定着するのではないかと期待しています。加えて、英検プラチナパートナー塾同士が交流できる機会もあり、その場を通して各地域の状況や英語教育の取り組みなどについて情報交換を行い、知見を広げ、刺激を受けております。
AIにより世の中がいかに便利になろうとも、
コミュニケーションの根幹は代替されない
昨今のAIの技術革新は目覚ましく、翻訳・通訳アプリなどツールの性能も日に日に高まっています。そうしたなか、英語が話せなくても困らない、英語の勉強なんてしなくていいといった声を時折耳にします。しかし、本当にそうでしょうか。お互いに顔を合わせて話をするというのは、人と人とのコミュニケーションの基本です。そして、仕事にせよプライベートの人間関係にせよ、物事を進めるうえで根幹となるのは人と人との血の通った対面のコミュニケーションです。好きな人から話しかけられたら心が躍りますし、先生から頑張っているねと褒められたら嬉しいものです。AIによってどれだけ世の中が便利になっても、コミュニケーションの根幹がAIに代替されることはなく、グローバル化がさらに進む今後は実用的な英語力は必須スキルであると、私たちは考えています。
繰り返しになりますが、私たちは、英語できちんとコミュニケーションがとれるようになってほしいという思いをもって英語教育を行なってきました。2024年度からは新たに、小学1〜3年生を対象に、保護者と一緒にTGGを体験するというプログラムをスタートさせました。親が英語を使っている姿、苦手なりにもなんとか英語で伝えようとしている姿を間近で見ることは、子どもにとっても良い機会になると考えています。親の影に隠れて様子を見るのではなく、親の横で自分も英語を使ってみる。そんな体験を通して、英語で臆さずコミュニケーションをとれるようになってほしいと思います。これまで培ってきた英語教育の知見を土台に、TGGという施設を最大活用しつつ、市進だからこそできる英語教育、受験の先を見据えた英語教育を、これからも実践していきたいと考えています。