“Hands-on Small Talk” スモールトーク【小・中学校編】W20-2: “What is your dream?”「将来の夢は?」(後)
「夢」について
前回から「夢」をトピックにした Small Talk の展開を考えています。
先生が自分の「夢」について語る《モデル提示》に続き、
I want to be a cartoonist. How about you? What do you want to be in the future?
という流れで、「先生と生徒」のやり取りが始まります。
最初の問いを “What do you want to be in the future?” にしたのは、直前に先生が伝えた “I want to be a ~.” の構文を生かして答えることができるためです。
さらに「サッカー選手になりたい」生徒には “What team do you want to play for?”(どのチームでプレーしてみたい?)や “What are you going to do to make your dream come true?”(夢を叶えるためにどんなことをするの?)と、やり取りを深めるために詳細を引き出す流れをご紹介しました。
5.問いかけにバラエティを
続いて2番目の生徒(S2)に問いかけます。「生徒同士」のやり取りに移るまでに、「夢」を語るために使えそうな、もっと多くの既習表現を思い出してもらいたいという意図があります。
T: S1 wants to be a professional soccer player. How about you, S2? What is your dream?
S2: I want … vet.
T: You want to be a vet. Your dream is to become an animal doctor.
このやり取りでは、まず直前の S1 の発話を整理した後、同様に「将来どんな職業に就きたいか」を S2 にたずねています。
ですが、先生の用いた表現を変えています。”What do you want to be in the future?” ではなく、”What is your dream?” と問いかけました。ここまでのやり取りから内容をつかめていれば、さらに what と dream という慣れ親しんだ語が聞き取れれば、「何を問われているのか」は理解できると期待しています。これに対して S2 は次のように答えています。
I want … vet.
これに対して、先生はこう続けています。
You want to be a vet. Your dream is to become an animal doctor.
ここには3つのポイントがあります。
- S2 が途中まで言えた表現を「完成させて」聞かせていること。S2 の発話から want と vet が聞き取れたため、”I want to be a vet.” と言いたかったのだと考えられます。そこで先生が You から始めて文を整えて言い直しています。
- 先生の “What is your dream?” に対する答えかたとして、”My dream is to ~.” を導入していること。ただしあくまでも暗示的に、You を主語として「(S2 さんの)夢は獣医さんになることなんですね」と伝えています。先生はまず S2 が伝えようとしたことを「受けとめる」ことが大切です。そして、意味が伝わっていれば、知っている表現を活用して伝え合いをすることを優先させたいためです。
- 先生が、さりげなく vet を “animal doctor” と言い替えていること。「獣医」を表す英語について、S2 は vet を思い出すごとができましたが、クラスには「vet って何だろう?」と思っている生徒がいるかもしれないことに配慮しています。
6.理由を深められるように支援する
S2 が「獣医さんになりたい」と答えたところから、今度は先生がその「理由」を引き出したいとします。
この時、次のように “Why?” とたずねるのが一般的だと思われます。
T: Why do you want to be a doctor for animals?
S2: I like animals.
T: You like animals. Do you have a pet?
S2: Yes. Cat.
T: You have a cat. …
先生はまた vet を別の表現で表しながら、”Why do you want to be a doctor for animals?” と問いかけました。すると S2 は “I like animals.”(動物が好きだから)と答えます。
小学校から中学校の英語での対話を聞いていると、まだ英語で表すことのできる内容が少ないからか、”Why?” という問いに対して、”I like/don’t like ….”(好き嫌い)、”I can/cannot ….”(できる、できない)、” I’m (not) good at ….”(得意、不得意)、”It’s (not) interesting/exciting.”(おもしろい、おもしろくない)などで答えて終わり・・・という例が多い印象を受けます。
この場面でも、「動物が好きだから、獣医さんになりたい」と意味的には通じるのですが、「もっと聞きたい!」のです。
つまり、「動物が好き」だから「動物に関わる仕事がしたい」のか、「動物を救いたい」のか、それとも「動物をもっと知りたい」のか ・・・ 。
そこで先生は、どうにかして詳細を引き出そうと “Do you have a pet?”(ペットを飼っていますか?)とたずねてみました。しかし「ネコを飼っている」ということだけで、「獣医になるという夢」に関連した発話を引き出すことができませんでした。確かに「獣医からペット」へと話をそらしてしまっただけかもしれません。
「どこまで詳しく理由を引き出すか」については、授業場面や目的、指導における考え方によって様々な見解があると考えます。その一方で、生徒の「理由をたずねられても、どういうことを言うとよいのか分からない」というふり返りを読んだことがあります。文脈に合わせて、「こういうことを理由として挙げることができます」というリストを提示する指導も考えられそうですが、まだまだ思考が柔軟な生徒に向けては抵抗があります。むしろ、先生の方から「思考を深める問いを重ねる」ことの方が大切ではないかと考えます。
T: So, S2, you like animals … and you want to be a vet in the future. Can you tell me more? You like animals and in the future, as a vet, … (what do you want to do)?
S2: I want to save animals.
T: I see. You want to save lives of animals. Nice dream.
上の例では、先生が “Can you tell me more? You like animals and in the future, as a vet, … (what do you want to do)?” と、さらなる S2 の発話を促しています。
“Can you tell me more?” (もっと聞かせて)だけでも大丈夫かもしれませんが、答えに詰まってしまったら、 “You like animals and in the future, as a vet, ….”(S2 さんは動物が好きなんですね。だから将来、獣医さんとして …?)と少しずつ話を整理していきます。その後、”What do you want to do?”(獣医さんとして、どんなことがしたいのかな?)と具体的にたずねてみました。
このように、「もう一歩」踏み込んだ理由を言える力を育てていくことは、母語であっても、外国語であっても大事にしていきたいと思っています。
「思考の深まり」、すなわち「深い学び」につながる指導者の「支援」を、まだまだ考えていきたいと思います。