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2022.12.16 教育情報 英語教育コラム

【第24回】スモールトーク、どのように進めていますか?

“Next activity is … small talk!”

 小学校高学年の外国語科導入に合わせて広く行われるようになった「スモールトーク」という活動。
新課程の外国語教育が始まってから、「良かったな」と思うことのひとつは、「スモールトーク」のような活動が、多くの英語の授業で意図的に取り入れられるようになってきたことです。

 スモールトークは、それまで英語による対話練習として one-minute talk や short conversation などと様々な表現で呼んでいたものについて、改めて目的を明確にし、積極的に言語活動として位置づけられたものと私は理解しています。
小学校外国語活動・外国語 研修ガイドブック」(文部科学省, 2017)ではスモールトークについて、次のような定義が記されています。

好きな食べ物やスポーツ、その理由、行事や長期休暇の思い出など、児童が興味・関心のある身近な話題について、自分自身の考えや気持ちを楽しみながら伝え合う中で、既習表現を繰り返し使用する機会を保障し、その定着を図るために行うものである。授業の初めに相手を替えて1~2分程度の対話を2回程度行う対話的な言語活動である。(p. 84)

 そして、スモールトークを行う主な目的として、「 (1) 既習表現を繰り返し使用できるようにしてその定着を図ること、(2) 対話の続け方を指導すること、の 2 点」(p. 84) が挙げられています。

スモールトークの目的を達成するために

 こうして小学校段階から導入されたスモールトークは、新課程の英語の学びが広がるにつれて中学校、さらには高等学校の授業においても、それぞれの学習内容や児童生徒の習得状況に応じて取り入れられています。そのような中、少し最近気になっていることがあります。

 “Let’s practice small talk!” という導入の後、
Ask your partner, “What’s your favourite subject?”
のような形で活動が始まる場面です。

 もちろん、この流れが間違っているということではありません。この形で児童に対話を始めさせると、subject(教科)というトピックについて自由に対話を続けるというよりも、次の例のように「相手の好きな教科を尋ねる」ことが目的となってしまっていることがあります。

児童A: What’s your favourite subject?
児童B: My favourite subject is math. [I like math.] How about you?
児童A: My favourite subject is music. [I like music.]

 スモールトークの初期段階ではこれで十分とも考えられますが、次第にトピックのみを提示して対話を展開する活動へと発展させたいものです。また、上で触れたスモールトークの2つの目的を達成するためにも、導入場面でさらに工夫ができそうです。

【目的 1】既習表現の定着を図る

 スモールトークの中で既習表現を繰り返し使用して定着させるには、児童が、様々なトピックについて伝えたいことを表す表現を、既習事項の中から自分で引き出せることが必要です。「この表現を使えば伝わる!」という表現を児童自身で選択することにより、「自分が英語でできること」を意識化させることができます。それこそ「Can-Doリストの形での学習到達目標」を一つずつ達成して “I can ~!” を積み重ねていく英語学習が目指すところです。

 ただそのためには、既習表現を想起させる支援が必要です。明示的に「使える」表現を1つずつ示してしまっては、児童自身が既習表現をふり返ることにはなりません。まず指導者の発話から「ある表現を聞いて意味が分かる」(受容)経験をさせ、続くスモールトークの中で児童自身が伝えたいことを表すために実際にその表現を用いる(産出)経験へとつないでいくことが重要です。

 まず指導者があるトピックについて、様々な既習表現を丁寧に含めながら自分の気持ちや考えを話して伝える。これが児童にとって、良質のインプットにもなります。このステップを大切にすることで、既習表現の数だけスモールトークの内容が広がり、さらにパターン化したやり取りではない自由で自然な展開が期待できます。

【目的 2】対話の続け方を指導する

 対話を続ける方略としては、相手の発話に対する感想を言う、内容を確認するために発話を繰り返したり聞き返したりする、質問をすることなどがあります。上記【目的1】と同様、ここでもまず指導者同士、もしくは指導者と児童のやり取りを通して、実際に対話が継続する場面のモデルを聞かせることを大切にしましょう。そして、必要に応じて「先生は今なぜ Oh, you like baseball! と言ったのかな?」、「That’s nice. と言ってもらって、どんな感じがしましたか?」のように児童に問いかけ、対話を継続する方略の機能を考えさせることも効果的です。さらに対話練習の間で行う中間指導において、方略や工夫の良い例をクラス全体で共有し、その後の練習で活用できるよう意識させることもできます。

児童の発話をどう受けとめ、発展させるか

 授業の中で即興的に児童との対話モデルを示すのは、指導者にとっても意外と緊張するものです。それは恐らく、問いかけに対して児童からどのような反応が返ってくるか予想がつかないため、モデルとして対話をどのように発展させればよいか即座に思いつかないためかもしれません。まずはどのような反応であっても対話を楽しむ余裕をもつことが大切です。その上で、次のようなパターンを意識しておくのはいかがでしょうか。

【① 指導者によるモデル提示(下線部は既習表現の例)】
指導者: I enjoyed watching baseball last night. I’m a member of the baseball club. I practice baseball every weekend, but I can’t play it very well. I want to be a good baseball player. I like baseball very much.

【② モデルを続けて行う児童Aとの対話】
指導者: How about you, A. What sport do you like?
児童A: I like tennis.

あるいは
指導者: How about you, A. Do you like baseball?
児童A: No, I don’t.
指導者: I see. What sport do you like?
児童A: I like tennis.

【③ その後の発展パターン】
(1) 同じ児童Aに対して、別の既習表現の理解と発話を促す
指導者: Can you play tennis well? [Are you good at (playing) tennis?]
児童A: Yes, I can! [Yes, I am.]

(2) 同じ児童Aに対して、直前の発話の内容を深める(詳細を補う)発話を促す
指導者: Why (do you like tennis)?
児童A: (Because) I can run fast. It’s exciting.

(3) 別の児童Bにも児童Aへの最初の問いを繰り返し、特定の表現(I like ~. / Do you like ~?)の理解と発話を促す
指導者: How about you, B? What sport do you like?
児童B: I like table tennis.

(4) 別の児童Bに対してそれまでの児童Aとのやり取りを踏まえた問いを続け、内容を発展させる
指導者: How about you, B? Do you like tennis?
児童A: No, I don’t. I like table tennis.


 スモールトークは決して ‘small’ ではなく、英語の授業の中で「コミュニケーションを実現する」大きな可能性を秘めた言語活動だと思っています。ぜひ児童に既習表現をもちいて「英語でこんなにたくさんのことができるんだよ!」と実感させてあげてください!

*スモールトークのトピックや展開例については、この英語情報Webの「Hands-on Small Talk」が参考になります。ぜひご活用ください!

>「スモールトーク」一覧はこちら

 


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<執筆者:池田 周 (いけだ・ちか) 先生のPROFILE>
愛知県立大学外国語学部教授。英国Warwick大学博士課程修了。博士(英語教育・応用言語学)。小学校英語教育学会(JES)愛知支部理事。

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