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2022.10.17 教育情報 英語教育コラム

【第19回】英語を速く読めるようになるためには訓練も有効

小学校外国語科の検定教科書などを見ていると、

My favorite subject is music.

I can play the piano well.

I enjoy singing.

I like anime songs.

のように1行に1文が書かれているのを目にすることがあります。これは小学校での英語の学びの特徴、すなわち音声でも、文字を通しても「文(語句や表現)としてのまとまり」を大切にし、そのまとまりで意味を理解することを反映していると考えられます。この段階を超えて、複数の文がまとまりのあるテキストとして表されたものを読む段階になると、一気に内容理解が難しくなるように感じられるものです。

 今回は、小学校英語の学習内容を超えて、中学校や高等学校、さらにその後の英語学習に役立つスキルについてお話します。

「読んでそのまま理解する」ために

 「直読直解」ということばがあります。
 英語学習で言えば、「読んだ英語の意味を、そのまま(母語を介さずに)理解する」ということです。これまで日本の英語教育で「文法訳読式」の教授法が広く用いられていた時には、英文を1つずつ文法規則に従って解読し、日本語に訳しながら意味理解を行うため、どうしても読みに時間がかかってしまうという問題がありました。そのため「直読直解」の意義に注目が集まり、その力を高める活動として、一定時間の中でテキストを読み通し、内容理解を行う「速読」が指導に多く取り入れられるようになりました。

「速く読む」ことである「速読」とは、どのくらいの速さを意図したものなのでしょうか。

それを明らかにしようと試みた多くの研究がありますが、その結果も様々です。英語母語話者であれば300 WPM以上、専門的に文章を読む人だと360 WPM程度とも言われます。ただ日本語母語話者のように「外国語として」英語を学ぶ場合、WPM (= words per minute / 1分間に読むことのできる単語の数) は、音読で約150 WPM、黙読で約240~250 WPM が最終的な目標とされることが多いように感じています。後者は特に、勉強のために本を読む場合など、内容をある程度詳細かつ正しく理解する目的で行う黙読を意図しています。このように、目標とするWPMは「テキストの内容理解がどの程度できていることを目指すのか」など、語数以外の要因にも関わることから、自分が速読をする目的に応じた目標を設定することが大切です。

「速読」訓練法の一例

 実はこの「速読」、英語を介して学ぶために必要なアカデミック・スキルでもあります。そのため、速読が苦手な生徒や学生を対象に、その訓練が行われることがあります。以下、実際に私が大学院生として留学した際、まだまだ英語力も英語のアカデミック・スキルも不足していたために受講した講座で体験した方法をご紹介します。

この「速読」訓練は、一定間隔で、一定のリズムで指先を紙の上などにタッチしていくことが基本となっています。一定リズムを維持するために、メトロノームを使いながら練習したことを覚えています。指導のステップは以下 (1) ~ (4) の通りです。

(1) 机の上で、読みの練習を行うテキストの幅(行幅)をイメージします。

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(2) 人差し指で (1) の幅の左端と右端を、「左、右、左、右、・・・」とリズム良く、軽くタッチする練習をします。速さは約1秒間隔で、幅が狭くなったり広くなったりしないよう、一定の幅でタッチすることを意識します(ここではまだテキストが印刷された紙の上ではなく、机上に白紙の紙を置いたりして行います。1回30秒~2分間程度の練習を何回か繰り返しましょう。慣れてきたらペアになり、一人が目を閉じて行い、もう一人が幅に変化がないかを確認しながら練習してみてもよいでしょう。)

(3) 次にその幅を4分割するように、行幅の左端から右端まで5回タッチする練習に移ります。最初は約1秒間隔でゆっくり、一定の幅で安定したタッチが行えるようになるまで続けます。その際、指先に視線が誘導されるイメージで、目を動かすことが大切です。このステップでもまだ実際のテキストではなく机上や白紙の紙の上で行います。テキストを用いて行うとどうしても見慣れた語などに意識が向いて目の動きが止まってしまうためです。1回1分~3分間の練習を繰り返していきましょう。テキストの行幅によっては、はじめから3分割とし、両端含む4回のタッチ練習から始めることもできます。

(4) 続いて実際に、テキストの上で (3) の練習を行います。指先が文字を覆ってしまわないようにしながら、視線が指先に導かれるイメージを大切にします。ただしこのステップでは、目の動きの訓練だけでなくテキストの内容理解が目的となるため、指先はぼんやりと視野の中に見える程度で、焦点は文字に当てることを意識しましょう。一部の語句や表現に引っかかってタッチのリズムが乱れないよう、機械的に、一定のリズムでタッチを続けます(実はこれが難しい・・・)。最初はパラグラフごとで練習し、次第にページの上から下まで全ての行をタッチしながら読み進める練習を繰り返します。

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 大切なのは、一定間隔で指先を動かしながら、テキストの最初の行から最後まで「読み通す」ことです。「タッチすること」に気をとられてテキストの内容が頭に入ってこない場合などは、(1) から (3) を自動化できるまで繰り返します。また (4) は、ゆっくりしたリズムで始めることもできますが、ゆっくり過ぎだと「戻り読み」につながったり、日本語に訳して意味を確認しようとしてしまうため、適切なリズム設定が重要です。また練習に用いるテキストも、未知語が多すぎて内容理解が追いつかなくなるものは望ましくありません。親密度の低い語も多少は読み飛ばして、推測で内容理解を補うことも、高度な読み技能としては必要ですが、速読の練習としては、学習者の読みのレベルよりもやや易しめのテキストを選ぶと良さそうです。

いかがでしょうか。
私は今でも、テキスト全体に目を通す必要がある時や、黙読中に集中力が途切れそうな時など、上の方法を使って乗り切ることがあります。さらに英語だけでなく、日本語やその他の言語にも応用できる訓練法です。まだ英語の初学者で、まとまった英文を読んで理解することができない時期を除き、長い期間、参考にしたくなる方法です。


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<執筆者:池田 周 (いけだ・ちか) 先生のPROFILE>
愛知県立大学外国語学部教授。英国Warwick大学博士課程修了。博士(英語教育・応用言語学)。小学校英語教育学会(JES)愛知支部理事。

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