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2022.09.28 教育情報 英語教育コラム

【第18回】英英辞典を「読んで」みませんか?

字面を訳すのではなく、意味を訳す

以前、学生との話の中で、ふと「あの人は本当に頭の回転が速いなぁ」って英語で何と言うんだろう・・・という話になりました。

学生A:「頭の回転」の「回転」って、どの語を使うのかな?
学生B:「回転する」ものって、何がある?
学生C:スケート?「ターン」とか、「スピン」とか?

turn(回転させる、方向を変える)という動詞を head(頭)と一緒に使うと、「首を回して顔をある方向に向ける」という意味合いになります。
◆ He turned his head away.(彼は顔を背けた)
◆ She turned her head to the door.(彼女は顔をドアの方に向けた)

一方、spin(回転させる)を使うと、このような意味になります。
◆ My head is spinning.(頭がクラクラする、目めまいがする)

どうも日本語の表現どおりに「頭が回転する速度が速い」と英語で表したのでは、適切に意味が伝わらないことが分かります。こういう時には、「もっと子どもにも理解できるように、易しい日本語の表現で表すことができないか」を考えるようにアドバイスします。

上の例の場合、「頭の回転が速い」は「利発な」、「頭の良い」といった表現に置き換えられそうです。これらに対応する英語としては clever / smart / bright / intelligent / sharp など複数の語が浮かびますが、それぞれ意味合いも少しずつ異なります。

他に、「(試験などでの)カンニング」を表す cunning のように、「ずる賢い」という意味を表す語もあります。ただ、これらの語を用いて “He is smart.” のように言うだけでは、何だか「頭の回転が速いなぁ」という感心する意味合いを表すには短く、物足りない感じがするのです。(あくまでも個人的な感覚で。)

この場合、次の表現が使えそうです。
He has a good head on his shoulders.

日本語と英語の単語の意味は「一対一」対応ではない

英語と日本語の対訳で単語を覚えるときには、それらの意味合いの違いに留意することが必要です。このことを体験的に理解させるため、小学校で児童に次のようにたずねることがあります。

Touch your head.(headを触って)

するとほとんどの児童が「頭のてっぺん」に両手を当てます。ですが英語のheadはshoulder(肩)から上の部分全体を表します。そのためface(顔)はもちろんheadの中にありますし、neck(首)もheadの一部です。頭頂部だけがheadではありません。
先述の have a good head on one’s shoulder という表現も、肩より上の部分全体がgood(優れている)というイメージでしょうか。

私が学生のとき、ある日、イギリス人の友だちから “Would you like to come over for dinner? How about 1 pm?”(dinnerに来ない?午後1時はどう?)と誘われました。
「dinner = 夕食」という対応で記憶していた私は、「夕食なのに、なぜ午後1時なんだろう・・・」と不思議に思ってしまいました。
実はdinnerは “Oxford Learner’s Dictionaries”* によると “the main meal of the day, eaten either in the middle of the day or in the evening(日中、もしくは夕方にとる、その日のメインの食事)” という意味であり、必ずしも「夕食」ではないのです。
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/dinner?q=dinner

逆に、日本語と対応する語が、英語に存在しない場合もあります。例えば、英語のwaterについて “Oxford Learner’s Dictionaries” * には次のような注釈があります。

Water is the name given to the chemical compound of oxygen and hydrogen with the chemical symbol H₂O.(waterはH₂Oの化学記号で表される、酸素と水素の化合物につけられた名称である)
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/water_1?q=water

つまり英語では、化学物質としての「水」をwaterで表します。hot waterは「温かい水」であり、「沸騰水」はboiling water です。さらにboiled water「煮沸水(一度沸騰させた水。冷めたものも、温かいものも指す)」とも異なります。そのため、次のような笑い話をよく聞きます。

Don’t ask for hot water if you want to cook instant noodles.(hot water では、〈温度が低すぎて〉カップ麺はできないよ)

日本語では「熱い湯」、「ぬるい湯」と言ったりしますが、英語には「湯」に相当する語がなく、「熱水」、「沸騰水」のような言い方になります。

初学者用の英英辞典を「読む」

こうした日本語と英語の語が表す意味合いの違いについては、実際に英語を用いながら気づいていくものもあります。しかし、学習過程において少しずつ「知識として学んでいく」こともできます。その方法が、英英辞典の活用です。

日本の小学校では3年生の国語の時間に、国語辞典の引き方を学びます。早い学校では1年生から扱うところもあります。こうして「言葉の意味を自分で調べる」ことへの関心を高めていきます。英語の語も、それがどのように英語で定義(説明)されているかを知ることで、表す意味を深く理解できるようになります。

そのためにオススメなのが、いわゆる「学習者用の英英辞典」Leaner’s Dictionaryです。特にElementary [Primary] Learner’s Dictionaryと言われるものが子どもには適しています。日本語では「小学生用の国語辞典」のような感じです。

実は私も学生時代に英語の教員養成課程を履修していたとき、中学校の英語の授業で用いる例文を探したり、語の意味を英語で説明したりするために Elementary Learner’s Dictionaryを勧められました。実際に使ってみると、この辞書が非常に「読んでおもしろい」ことに気づきました。今、こう書いている私の横にも、数冊のElementary / Primary Learner’s Dictionary があります。

英語学習者としては、高校くらいのレベルになると一般のLearner’s Dictionaryを授業で用いるようになりますが、そこに書かれている英語の定義を理解するために、さらに英和辞典を引かなくてはならないこともあります。

ですがElementary [Primary] Learner’s Dictionaryは英語の構文や語句も簡単で、そのまま楽しく意味を理解しながら読み進むことができます。ぜひ「単語の意味を調べるため」だけでなく、「読み物」として英英辞典を活用されてみてはいかがでしょうか。


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<執筆者:池田 周 (いけだ・ちか) 先生のPROFILE>
愛知県立大学外国語学部教授。英国Warwick大学博士課程修了。博士(英語教育・応用言語学)。小学校英語教育学会(JES)愛知支部理事。

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