学校で手薄な文法指導に注力しつつ、使える英語力を養成する
株式会社 練成会
教務統括 本部長
川筋 朗嗣 氏
「心と創造」の創業理念に基づき、学力のみならず心を育む指導に勤しむ
練成会グループは、(株)練成会、(株)れんせい、(株)ごうかくから成り、北海道を中心に、宮城県、山形県、青森県でも教室を展開しています。創業理念は「心と創造」。教育を通して学力のみならず生徒の心を育み、未来を自らの手で創造してほしいという思いから、困難を乗り越える力、礼儀、他者への思いやりといったところまで指導をしています。
北海道は公立志向の強い地域で、以前よりは増えてはいるものの、私立中学校・高校への進学者は多くはありません。そのため、塾での指導においては高校受験、特に公立高校の受験指導に重きを置いてきました。そして、北海道の公立高校入試では、中学校の成績、つまり内申点が重視されます。数年前までは、当日点より内申点の比重が大きかったほどです。現在は当日点のほうが比重は大きいですが、それでも内申点が占める割合は依然として高く、かつ、中学1年生から中学3年生までの成績が対象になるため、中学1年次からしっかりと定期試験で点数を取ることが不可欠になっています。こうした状況に対応するべく、各教室では中学3年生の受験指導はもちろん、生徒が通う中学校の定期試験対策に注力しています。
学校の授業と定期試験問題のギャップを埋めるため、文法指導に力を入れる
数年前から北海道の公立高校入試では英語の問題に変化が見られるようになり、今はまさに過渡期となっています。具体的には、リスニングの配点が増え、英作文など「書く力」を試す問題の割合も増えています。また、読解問題では新傾向の問題が見られるようになっています。一方、文法事項を直接問うような問題はほとんどなく、採点においても、文法的に間違っていても伝えたいことを表現できていれば得点がもらえる傾向が見て取れます。入試の英語はコミュニケーション重視にシフトしつつあるため、コミュニケーションツールとしての英語力を高める受験対策指導に力を入れています。
また、中学校の英語の授業もコミュニケーションや読解が中心になり、文法の指導はほとんど行われていません。しかしながら、こうした動きに反して、多くの中学校の定期試験は旧来のままです。つまり、教科書の英文が出題され、語彙や文法事項が問われる…というものです。授業と定期試験のギャップを埋めるために、塾では文法の指導や語彙力増強に力を入れており、読解やリスニング、英作文も含めて、いわゆる昔ながらの指導をしているというのが現状です。もちろん、英語でのコミュニケーション力を高めるためには、こうした基礎的な学習の積み上げが不可欠であり、しっかりとした土台づくりはどのような時代であっても必要であると考えています。
プレテストの全員受験で見えてきたペーパーテストでは測り切れないもの
英検については、かつては「英検コース」を設定して英検5・4・3級を受ける生徒を対象に集団指導を行っていました。しかしながら、生徒によってレベルアップのペースやタイミングが異なるなか、個別対応が難しいことから、個々で文法等の解説動画を見て問題を解くというスタイルに切り替えました。英検対策コンテンツについては改善の余地があると考えており、今後はより良いものを開発・提供していきたいと考えています。
英検は毎回準会場実施をしており、生徒には積極的に受験をするよう推奨しています。北海道の中学校では全生徒が英検IBAを受けるのですが、学年統一で同じレベルのものを受けるため、特に英語が得意な生徒にとっては物足りない、受ける価値が感じられないというケースもあるようです。そうしたなか、プラチナパートナーシップの締結を機に、プレテストを導入しました。初回は試験的に「学校で受ける英検IBAより一つ上の級」になるようレベルを設定し、中学生全員に受けてもらいました。通常授業の枠の中で一斉に取り組んだため、個々の希望には応じられなかったのですが、来年度以降は個別対応も検討していく予定です。
プレテストについて興味深かったのが、中学校の定期試験だと点数が思わしくない生徒も、プレテストでは思いのほか結果が良いケースがあったことです。「聞いて・読んで理解できる」状態から「書ける」状態になるまでには時間的なギャップがあることを、改めて実感しました。生徒にとっても、自分は英語が根本的に苦手なわけではないんだという気づきになり、学習意欲の向上につながることを期待しています。
なお、以前は英検3〜5級に限っていた準会場実施を、プラチナパートナーシップの締結を機に、2024年度は英検2級まで拡大しました。この影響もあり、準会場での受験者数は準2級を中心に大きく増えました。特に、受験者の35%程度を一般生(塾生以外の児童・生徒)が占めているのが特徴です。学校での準会場実施が縮小傾向にあるなか、ニーズの高まりを感じています。プラチナパートナーシップであることは全教室に広く伝えているので、一般生の入塾動機につながると考えています。
地に足のついた確かな英語力を習得し、その証として英検という資格を取得する
プラチナパートナーシップ塾として、今後も生徒には英検の受験を推奨していきたいと考えています。一方で、ただ英検を受ければいい、上位の級を取得すればいいとは考えていません。例えば、4月から英検5級の勉強を始めて10月のテストで合格した生徒に対しては、よほど高い正答率で合格していない限り、次の1月のテストで英検4級を受けるのは時期尚早だとアドバイスします。なぜなら、英検5級レベルを完全に網羅してしっかりと土台を固めたうえで次の級に挑戦してほしい、と考えているからです。より早くより上位の級を取得したい・させたいという生徒や保護者の気持ちはわかりますが、理解が伴わないまま次々と進んでしまうと、英検の級を持っているだけの子になってしまいます。そうではなく、しっかりとした英語力を習得し、その証として英検という資格を取得するという考え方を、生徒や保護者にも伝えています。
学校現場ではコミュニケーション重視の英語教育が進んできていますが、それでもやはり、英語を話せるようにはなりません。そこには、間違いたくない、恥ずかしいなど、英語を口にすることへの心理的な抵抗感が少なからずあると思います。そのハードルを下げるために、当グループ会社の一つである(株)れんせいでは、小学生の英語の授業の中で、2週間に1回、10分程度ではありますが、外国人講師と英語で話すオンライン英会話の時間を設けています。私も講師として授業を担当しており、子どもたちの緊張をほぐすために、オンラインでつなぐ前に場を盛り上げ、空気を温めておくことを意識しています。回を重ねるごとに生徒はリラックスして臨めるようになり、今ではとても楽しそうに取り組んでいます。
オンライン英会話の取り組みには手応えを感じており、練成会が運営する教室でも試験的に導入し、今後も広げていきたいと考えています。文法や語彙、読解といった基礎固めとコミュニケーション力養成の両輪で、今後も子どもたちの英語力向上をサポートしていく所存です。