小・中#10-1: Tell me about your town.「町には何がありますか」(前)
小学校では社会の時間に自分たちが住む町(地域)について学習します。 そこで得た知識や情報を基に、英語の時間でも「自分の住む町」について伝える活動をしてみましょう。 今回は “Tell me about your town.” という問いかけに英語で答えられるようになることを目指して、「町にあるもの」、「町にないから欲しいもの」などについてやり取りを考えてみます。
1.町(地域)について話すために必要な語彙を確認する
◆慣れ親しんだ自分の町の地図を使う
T: Look at this map. Do you have any idea of where it is?
Ss: XYZ!
まず地図をパッと見せて、児童に質問します。自分たちの住む町、あるいは慣れ親しんでいる町だからこそ回答も明確です。指導者の問いが難しくても “Do you have any idea of WHERE it is?” と “where” を強調して聞かせることによって、「何を尋ねられているのか」が伝わるように配慮します。
T: Yes, that’s right. It’s our town. We live in XYZ. Our school is in XYZ. Actually, it’s my hometown and I still live here in XYZ. I like XYZ. We have many places and buildings in XYZ. For example, what’s this? Can you see? Can you say what it is in English, … S1? It’s …?
S1: It’s XYZ station.
T: Good job! It’s XYZ station. [絵カードを貼る] Repeat, “Station.” …. “Station.” …. Excellent!
地図が自分たちの住む町のものであることを確認したら、児童が使えそうな様々な表現を使って町について聞かせます。”We live in ~.” “Our school is in ~.” ”I live in ~.” “We have ~.” などの表現を、ジェスチャーを取り入れたり、地図を参照したりしながら音声で提示します。ここではまだ、その後の活動に必要な語句に慣れ親しませることが目的ですので、提示した表現には焦点を当てません。
そして、地図上の「駅」を指して、児童が「先生が指しているのは駅という施設である」ことを認識している状態で “Can you say WHAT it is in ENGLISH?” と尋ねます。How do you say “駅” in English? という問いも可能ではありますが、地図から「駅のことを指している」ことは明らかですので、できれば日本語にすぐ直して聞かせるのは避けたいところです。
そして “station” という語が引き出せたら、いつものように少なくとも2回、クラス全体でリピートして発音練習をします。
T: Then, what’s this?
S2: ABC.
T: Yes, ABC. But what’s “ABC”? What do you do there? Do you enjoy sports? Do you read books? Do you …?
S2: Shopping.
T: Oh, you do the shopping at ABC? Again, what is ABC? ABC is its name. But what is it (in a general term)?
S2: Depa-to.
T: Well done! ABC is a department store. It’s ABC department store. Repeat. “Department store.” …. “Department store.”
上のやり取りには、ある意図が込められています。英語で何かを伝えるときの固有名詞の扱い方です。この場面では、指導者が指した建物を見て、児童が “ABC.” とだけ答えています。「ABC デパート」、「ABC百貨店」の固有の名称の部分だけを取り上げていますが、それは ABC が表すものがある特定のデパートであることを「知っている」人々の間だけで理解できる伝え方です。特に初めてその地を訪れた観光客のように、その場所や話題について既有知識の乏しい人々に対して説明する時には、それが一般的にどう呼ばれるものかを説明する必要があることを意識して伝えることが大切です。
そのため、ここでは “What’s ABC? What do you do there?” と指導者がさらに問いを続けています。かつ “What do you do there?” という問いが難しい場合を予測して、 “Do you enjoy sports? Do you read books?” などのように例を示し、児童が「そこで何をするのかを尋ねられているんだ」と分かるように促しています。
◆児童の知らない町、架空の町の地図を使う
上の例とは異なり、児童の知らない、架空の町の地図を敢えて取り上げ、指導者がその町の施設や建物について “I want to introduce XYZ town to you.” のように、プレゼンテーションする形で語句を導入することができます。
T: Look at this map. This is a small town, XYZ. I like this town. I want to introduce XYZ town to you. This is the main station of this town. [絵カードを貼る] Can you repeat? “Station.” …. “Station.” …. Good! You can see many trains here every day. Then, in front of the station, there is a … department store. [絵カードを貼る] “Department store.” …. “Department store.” You can buy many things here. I like the bakery in this department store. I like bread and pastries from this shop. Can you say, “bakery”? …. “Bakery.” …. Excellent!
ここでは、”This is ~.” の表現を用いて “station” と ” department store”、”bakery” の語を提示しています。それぞれ直後に “You can see many trains here every day.” や “You can buy many things here.”、”I like bread and pastries from this shop.” のように「その場所の特徴」や「できること」について英語の説明を続け、児童の理解を支援します。これもすぐに対応する日本語を提示しないための工夫です。
実際の授業では、「駅だ~!」、「デパート!」、「ベーカリーってパン屋さんのことだ!」と児童が次々に叫ぶ様子が想像されます。こうした時には、指導者は大きくうなずいたり、”Yes!” と言ったりしながら、授業全体の英語の雰囲気を維持するとよいでしょう。日本語で説明した方が一瞬にして理解できる・・・という場面も確かにあります。しかし、ここはまだ絵カードのイラストや指導者の説明から推測させることを大事にします。
2.指導者によるモデル(児童の目指す姿)
語句を導入し、絵カードのイラストを表す英語が言えるように復習をしたら、今度は指導者がこのスモールトークで目指す姿をモデルとして示します。
T: I live in XYZ town. It’s my hometown. I like this town very much. We have beautiful mountains. I enjoy hiking in the mountains. My favorite place is “Green Park” in the center of XYZ. Many people come here on the weekend and enjoy playing soccer and baseball. I’m a member of the local baseball team. So, on Sundays, I spend all afternoon playing baseball with other members in this park. XYZ is a very convenient town. We have a big department store and lovely small shops near the station. We also have nice restaurants. You can enjoy many kinds of dishes. But I want a movie theater in XYZ. I like movies very much and (I) want to watch movies on a big screen.
児童一人一人に、ここまで長い発話を求めているわけではありません。この指導者によるモデルは、上記1の「必要な語彙の確認」を受けて、「児童に使って欲しい既習表現の確認」、さらに新出であっても「役立つ表現の提示」といった目的をもつものです。ゆっくりと丁寧に、その後のやり取りの活動の中で、自分が伝えたいことを表すヒントとなるように、まずは「聞いて理解すること」から始めるのです。
続いて、指導者は以下のように尋ね、モデルに意図的に含めた「使える・役立つ表現」を取り出して確認していきます。
T: What did you hear?
Ss: Mountains!
T: Yes, mountains. Beautiful mountain. (I said,) “We have beautiful mountains.” Can you repeat? “We have beautiful mountains.” …. “We have beautiful mountains.” …. Good! Anything else? What did you hear?
児童が単語で答えたら、それをターゲットとなる「文の形」で言い直して聞かせます。この繰り返しで、「この表現、言ったことあるな」、「こういうふうに言うとよいのか」という児童の気づきを促すのです。
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ここまで、最終的に “Tell me about your town.” という問いかけに答えられる児童の姿をイメージしながら、それに必要な語句や表現を復習、さらに新たに提示してきました。続いて今度は、児童とやり取りをしながら、「自分の住む町についての思い」を整理させていきます。
その展開例について、次回、考えていきたいと思います。