小・中#5-2: Get to know each other! クラスのみんなと仲良くなろう ~ 英語で自己紹介 ~ (後)
前回から、Get to know each other! 「クラスのみんなと仲良くなろう!」をテーマに、どのように英語で「自己紹介する」活動を導入するかについて考えています。
小・中#5-1: Get to know each other! クラスのみんなと仲良くなろう ~ 英語で自己紹介 ~ (前)
「英語でできること」を1つずつ増やしていくことが、「英語の学び」です。自己紹介という活動においても、自分について伝えたいことを、何とか既習表現を用いて表そうと努力するとともに、それでも英語にできないことや、より適切な表し方があることについては、新しく学ぶべき語句や表現として使ってみるように促したいものです。
「今日は英語で自己紹介してみましょう!」・・・楽しそうな活動です。 しかし学びの過程で行う活動であることを考慮すれば、「~するために」という目的、「~を考えながら、~を意識しながら」という場面や状況が設定されていることが、その活動が単に機械的な表現の言い合いで終わることを防ぎ、実際の言語運用のように、何かを考えたり、判断したりしながら効果的な意味や情報の伝え合いを再現することに繋がるのです。
そこで前回は、指導の流れのうち、「今日は友だちに自分のことをよく知って覚えてもらえるように、英語で自己紹介しよう」と「自己紹介の目的」を明確にし、さらに指導者が、これまで学習した表現を使って児童に問いかけながら、自己紹介にも使える表現として意識させるところ〔下図のA〕までを例示しました。今回はその続きを考えていきます。
練習から発表(自己紹介)まで
その後の指導としては、「では各自、どのような自己紹介をするか考えて、本番に備えましょう」、もしくは「各自で自己紹介をまとめたら、ペアかグループで練習し、手直しをして完成させましょう」といった流れが多く行われているのではないでしょうか。それぞれ以下1、2に対応するものです。
1. 児童が一人一人で考える時間を設け、その後、グループごと、あるいはクラス全体で順番に発表(自己紹介)をする〔下図 C→E〕
2. 児童が一人一人で考える時間を設け、その後、ペアやグループで練習を行い、聞いた人からフィードバックをもらって本番の発表(自己紹介)に繋げる〔下図 C→D→E〕
ですがその前に、指導者と児童のやり取りによって、自己紹介の内容の手掛かりを示し、既習表現をどのように使うことができるかを復習するステップ〔上図 B〕を加えてみることをお薦めします。
【展開例】
まず「友だちに自分のことをよく知って覚えてもらうために」自己紹介を工夫することを思い出させます。
T: OK, everyone. In your self-instruction, you tell about yourself so that the new friend (you’re talking to) can remember you. What do you want to tell your new friends?
その後、児童とやり取りを行うのですが、 「What are the two things you want to tell your new friends? … Sports and food? … What sport do you like? … Oh, you like soccer!」 と直接的に尋ねていくと、せっかく児童が自己紹介でみんなに話して驚かせようとしている内容を、クラスの前で先に言ってしまうことになります。一般的な話として進めていきましょう。
そこでまず、指導者自身のことについて話して聞かせます。
T: Now, listen to me. Hello, everyone. My name is XXX YYY. Call me YYY. Nice to meet you I want to tell you about my favorite sport and color. My favorite sport is tennis. I can play tennis well. And … my favorite color is blue. Blue is cool. Thank you.
あるいは、もっと既習表現のバラエティを生かして詳しく話すこともできそうです。以下のように文字にしてみると「同じことの繰り返し」でしつこい印象も受けますが、「こんな表現もあったよね」と確認しながら話すとよさそうです。
T: I like sports very much. My favorite sport is tennis. I like tennis very much. I can play tennis well. I practice tennis every weekend. I want to join the local tennis team. Also … my favorite color is blue. I like blue. Blue is cool. My pencil case is blue.
ここから、何名かの児童に問いかけていきます。まず指導者の自己紹介で伝えた「好きなスポーツ」と「好きな色」のうち、「スポーツ」を聞き取れたか確認します。そして「スポーツ」のトピックで、S1 に「好きなスポーツ」、「そのスポーツ(サッカー)が得意かどうか」、「いつ練習するか」を聞き出します。それぞれ対応する英語の表現を復習する意図もあります。
T: How was my self-introduction? What is my favorite sport? Do you remember, S1?
S1: Tennis.
T: Yes, that’s right. My favorite sport is tennis. What about you? What’s your favorite sport?
S1: Soccer.
T: Oh, soccer! Are you good at soccer?
S1: Yes …
T: Good! You’re good at soccer! So you can play soccer well. Do you practice soccer every day?
S1: No … Saturday.
T: You practice soccer on Saturdays? [ S1 うなずく] I see. Thank you, S1.
同様に、指導者の「好きな色」についても、聞き取れたかどうか確認し、さらに S2 の「好きな色」を尋ねます。理由をうまく答えられない場合もあります。そんな時には、指導者が話し手の役割を引き取って、自分のこととして表現例を伝えてあげるものよいでしょう。下の「黄色が好きな理由」を言えなかった S2 への対応です。
T: Hello, S2. Do you remember my favorite color?
S2: Blue.
T: You’re right! Yes, my favorite color is blue. Blue is cool. Look. My pencil case is clue. What about you? What’s your favorite color?
S2: Yellow.
T: You like yellow. Why do you like yellow?
S2: ….
T: I like yellow too. Yellow is a beautiful bright color. Do you have something yellow?
S2: Yes … [ Tシャツを指差す ]
T: Your T-shirt! Yes, your T-shirt is yellow. Nice T-shirt! Thank you, S2.
続いて、指導者の自己紹介では「好きなもの(スポーツ、色)」の表現しか用いなかったため、「苦手なもの」の表現を復習していきます。
実は小学校で「好きな色は何ですか(What color do you like?)」の表現を習った後で、どうしても児童が尋ねてみたくなるのが「苦手な(嫌いな)色は何ですか」という質問。「* What you don’t like color?」や「* What color do you don’t like?」(いずれも非文)のように、何とかして尋ねようとする児童を見かけます。きっと「苦手な色」も話題にしたいのだと思います。「What is the color you don’t like?」という疑問文は、what 、the color と you don’t like をそれぞれ強調して聞かせれば、意味は伝わります。
T: Hi, S3.
S3: Hi.
T: What color do you like?
S3: I like pink.
T: You like pink. Me too. I like pink too. Then, what is the color you don’t like? [ 苦手なジェスチャーをする ]
S3: Color … I don’t like … こげちゃ.
T: Dark brown? This color? [ 焦げ茶色のものを指す ]
S3: Yes. I don’t like dark brown.
T: I see. Thank you, S3.
さらに、指導者の自己紹介では扱わなかったトピックについて話を広げていきます。これまで出てこなかったトピックも含めて、多くの児童に自己紹介のヒントとなるようなものを取り上げておきましょう。ここでは既習事項である「学校の施設、教室」を表す語句を生かせるように問いかけています。
T: Hello, S4. What is your favorite room in our school?
S4: Room?
T: Yes, room. We have classrooms, a music room, a science room, a gym, …
S4: Oh, gym.
T: You like the gym. Why?
S4: Why ….
T: You like sports?
S4: Yes, I like sports.
T: That’s why you like the gym. What sport are you good at?
S4: Basketball.
T: You’re good at basketball! Nice! Can you say, “I’m good at basketball”?
S4: I’m good at basketball.
T: Well done! Everyone repeat after me. “I’m good at basketball.” …
最後の部分のように、児童がまだ十分に慣れ親しんでいないと感じられる表現については、クラス全体でリピートしてもよいでしょう。特定の児童とのやり取りで出てきた表現は特に、他の児童がしっかりと聞き取れていない可能性もあります。だからこそ、ここでは「リピートは2回ずつ」ルールを徹底します。
こういうステップを取り入れることにより、クラスの人数が多くても、一人一人の児童への支援を行うことができます。学校外で英語を習っている児童も増えている今、学校での学びを通して少しずつ英語を習得している児童の状況に応じた手だてが必要と考えます。
この後、児童は各自、自分の自己紹介を組み立て、「相手に伝わりやすい話し方」も意識して練習しながら、本番に臨みます。
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いかがでしょうか。なかなか日常生活で英語のインプットに触れることが少ないからこそ、英語の授業では、先生の英語をたっぷりと聞き、しっかりとやり取りを行い、自分でも何度も言ってみる。そのための時間を大切にしたいと思います。