小・中#16-2: “What do you do in your free time?” 「時間があるとき、何をしますか?」(後)
前回から、「時間があるとき、何をしますか?」に関連する表現を用いたやり取りを考えています。
小・中#16-1: “What do you do in your free time?” 「時間があるとき、何をしますか?」(前)
英語で自己紹介に取り組むとき、“What’s your hobby?” 「趣味は何ですか?」という表現を覚えて言ったりすることがあります。
自分自身で “My hobby is reading books.” と言うのとは異なり、「趣味は何ですか?」とたずねられたときに、これまで趣味と明確に意識して続けてきたものがない場合もあるのではないでしょうか。
そして、“Well, I don’t really have a proper hobby, but I like to read books in my free time.” 「趣味・・・というほどのものではないですが、時間があるときには本を読みます」のような返答になったりします。
そのため、“What do you like to do in my free time?” という問いで、相手が好きで続けていることを柔らかくたずねる言いかたを知っておくと役立ちます。
前回は、小さな表現の違いに気づかせるやり取りを、指導者と生徒の間で行う例を考えてきました。
まず「時間があるときにすること」について、指導者の簡単なモデルを聞かせ、“What do you usually do on Saturdays?” と、特定の曜日にすることから生徒に問いかけ始めました。さらに、以下2つの異なる問いを導入するところまで例示しました。
What do you do in your free time?
What do you like to do in your free time?
【具体的なやり取り例(W16-1より)】
T: Hi, S4. S3 likes to play with her cat in her free time. How about you?
What do you like to do in your free time?
S4: I like … piano.
T: You like to play the piano. Do you practice the piano every day?
S4: Yes, I do.
T: How long do you practice the piano every day?
S4: One hour.
T: You practice the piano for an hour every day. Great! Thank you, S4.
用いられた表現の違いを明示的に指導したりはしない代わりに、その問いに対して答えるための適切な表現を、必要な情報を生徒から引き出した上で、指導者が整理して聞かせることを繰り返しています。このように何度か「これまでとは少し違う」表現に音声で慣れ親しみながら、中学校の授業であれば板書として整理し、どのように違うのかを、表現や意味のニュアンスを含めて明確に意識させる段階につなげてもよいでしょう。
今回は、さらに少し表現を変えて生徒に問いかける例を考えます。
T: S4 likes to play the piano in her free time. What do you like to do in your spare time, S5?
S5: Spare …?
T: Yes, in your spare time … in your free time. What do you like to do in your spare time?
S5: I like to read manga.
T: “I like to read manga in my spare time?” Can you repeat this?
S5: I like to read manga in my spare time.
T: Well done. You like to read manga, … comic books. Me too. Thank you, S5.
上の例では、”in you free time” を “in your spare time” に少し変えて S5 にたずねてみました。S5 は例のように「聞いたことのない単語があるな」と気づくかもしれません。指導者もできるだけすぐに和訳でヒントを与えないように、“in your spare time … in your free time” と既習の表現で言い換えています。さらに、この例のように「完全な文」で言うことを求めるのであれば、指導者が整理した文を繰り返すように促してみることもできます。
さらに次は、「when 節」を用いてみます。
T: S5 likes to read manga in his spare time. How about you, S6? What do you like to do when you are free?
S6: I like to watch TV … free ….
T: Yes, “when I am free.” Can you repeat?
S6: When I am free.
T: Good. Now can you say that again? “I like ….”
S6: I like to watch TV when I am free.
T: OK. What program do you watch?
S6: I watch anime.
T: Oh, so, you enjoy watching anime on TV. Thank you, S6.
ここでは「時間があるときに」という表現を “when you are free” という節の形で表しました。S6 は「free は同じなのに・・・どこか違う」と感じて “… free …” と言っています。こうしたとき指導者は、もう一度問いの全体を聞かせることもできますが、今回は “I like to watch TV …” という S6 の返答を補完する部分だけを “when I am free” と添えています。
そしてやはり、”Can you say that again?” と言いながら出だしを繰り返し、S6 が「完全な文」を言うように促しています。単語レベルでの返答で「意味が伝わればよい」場面と、学習者として「きちんと文の形で言ってみる」ことが必要な場面があります。指導者はそれらを柔軟に区別しながら、生徒に支援をしていくことが大切です。
最後にもうひとつ、「時間があるとき」という別の言いかたも導入してみましょう。
T: Hi, S7. S6 likes to watch TV when she is free. What do you like to do when you have time?
S7: I … dance.
T: You practice dancing when you have time? Wow, that’s cool. Can you dance well?
S7: Yes.
T: Great! Thank you, S7. Hi, S8. S7 likes to practice dancing when she has time. What do you like to do when you have time?
S8: I watch TV.
T: “I watch TV when …?”
S8: I watch TV when you have time.
T: Almost there. Listen. “I watch TV when I have time.” Can you say?
S8: I watch TV when I have time.
T: Good. Do you like to watch anime on TV, like S6?
S8: Yes!
T: Anime is very popular. Thanks, S8.
この例では、「時間があるときに」を表すために “when you [I] have time” という表現を用いました。そしてまず S7 から「ダンスの練習する」という情報を引き出してから、指導者がさりげなく “You practice dancing when you have time?” と “when you have time” の節を含めた文全体を整理して S7 に確認しています。ここで細かい指導をしないのは、実は理由があります。
すなわち、このやり取りをクラス全体の生徒も聞いています。次に指導者は、S8 に同じ問いをしていますが、S7 が「時間があるときにすること」を伝える文にも、さらに S8 に対する問いの文の中にも、”when you [I] have time”(”when she has time”)が用いられています。つまり最初に S7 に “when you have time” を使って問いかけたときから、生徒たちは少なくともこの表現に音声で4回親しんでいます。新しい表現に耳から覚えさせることを意図した対応となっています。
ただ上の例のように、S8 の主語を表す代名詞の習熟度によっては、「テレビを観る」と答えたあとで “when …” を続けようとしても、次にくる主語を迷ってしまうことがありそうです。これまで聞いた例文では「when 節」主語が you / I / she のいずれかが使われていたからです。こうした場合、中学生であれば「S8 さん自身のことだから・・・?」というヒントを出すこともできます。小学生には、指導者が正しい表現を言い、それを繰り返させる形で文を整えていきましょう。
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前回から今回にかけて、いつものように「児童から様々な表現を引き出す」ことに加え、指導者の発する問いにも変化をつけ、その表現の違いに気づかせるようなやり取りの例を見てきました。「表現の違いに気づく」、すなわち「細かな表現を意識するようになる」ことは、言語の学習を促進するために大切なものです。そして、違いを常に指導者が明示的に教え込むのではなく、学習者が自分の力で気づけるようにする。そのための支援の出し方を工夫できることが、指導者には必要です。