《小学校英語》「音あそび」をしよう! ー STEP 5「日本語をアルファベットで表してみよう ~ ローマ字② 《有声音の子音から始まる行》 ~」
◆STEP 5
STEP 4では、無声破裂音の子音である /k/ と /p/ に焦点を当てました。そして、日本語の仮名文字が「子音 (C)+母音 (V)」の構造であり、語の「はじめの子音」を取り除くと別の語になることに気付く活動を行いました。
実は、これらの子音には、破裂音ゆえに「後に続く母音と、音が混成しづらい」という難点があります。例えば、「/p/, /p/. …」と無声音(喉が震えない)を続けて出せるようになった子どもに、「その後ろに /e/ の音をくっつけてみて!」と言うと、すぐに /pe/ の発音が出ず、「(空気だけの)ぷえ」のように答えてしまう子どもが多いです。こういうときは、「/p/, /p/, /e/, /p/, /p/, /e/, /pe/」のようにテンポ良く、勢いをつけて言う練習をすると慣れてきます。ただこういう時こそ、文字の助けを借りて、文字を見ながら「音の足し算」をする方が良いのではないかと感じています。
しかしながら /k/ や /p/ は無声音であるゆえに、「子音だけを発音する時に、母音を後ろに伴っていないことを喉に手を当てて確認しやすい」という利点があります。この利点が、仮名文字から子音を取り出す活動の取り組みやすさに繋がるため、最初に扱いました。
続く STEP 5 では、同様の活動を、有声音の子音を用いて行います。
◆指導のヒント
日本語訛りの英語の発音の特徴として、I like strawberries. を「あい~、らいくぅ~、すぅとぉろぉべりぃ~ずぅ」(かなり誇張しています・・・)のように発音してしまうことがよく指摘されます。これは、子音で終わる語(like など)の後や、子音が繋がっている部分(strawberries の str- など)のそれぞれの子音の後に母音を補ってしまう現象(vowel epenthesis 「母音挿入」)です。
母音挿入が起こる原因としては、日本語の音声を区切る基本的な単位が「モーラ」という「子音+母音」の構造であることの影響が指摘されています。つまり、日本語の母語話者は、英語の音声を聞きながら、その音のつながりを「子音+母音」のまとまりの後、あるいは「母音の後」で区切ろうとする自然な傾向があるということです。日本語にも、文末の「です、ます」や「スキー」、「立つ」などの語では /u/ の母音が無声化する現象がありますが、一般に子音だけを発音することがないため、英語の子音を聞くと、無意識に後ろに /u/ や /o/ などの母音を補って保持してしまいます。
この STEP 5 で扱う /m/, /n/, /b/, /g/ は有声音の子音ですので、発音する時に喉の震えを感じます。後ろに同じく有声音の母音を伴っていても、喉の震えは同じですので区別できません。それぞれの子音の「音の出し方」を子どもたちと意識してみることで、子音の音を正確に認識し、発音できるようになることを目指しましょう。
/m/ は上下の唇を少し押し合うように閉じます。その時、舌先は口の中でどこにも付きません。/n/ は唇を軽く開き、舌先を上の歯茎の後ろ側に付けます。大事なのは、いずれもそのままの状態で「/m/~」、「/n/~」と「音を伸ばすことができる」ということです。
また /b/ と /p/ は発音も唇を閉じた状態から、続く母音に向けて勢いよく息を吐き出す破裂音です。その時に、喉を震わせ有声化するのが /b/、息だけ出す無声音が /p/ です。 /g/ と /k/ も同様にいずれも舌の後ろの部分を上あごに付けた状態から離す時に、有声化すると /g/、無声だと /k/ です。子どもたちと喉に手を当てて、/b/ と /p/、/g/ と /k/ のペアで音の違いを確かめましょう。
STEP 5では、導入活動で「ま行」と「な行」、Worksheet 5-1 でその復習と濁音の「ば行」、「が行」の導入、さらにWorksheet 5-2 で、それまで読み書きできるようになった行のまとめを行います。
◆所要時間:導入活動のみ 15分/Worksheet 5-1 15分、 Worksheet 5-2 15分
《Worksheet 5-1は、こちら からダウンロードできます》
《Worksheet 5-2は、こちら からダウンロードできます》
◆活動のねらい
① 母音が同じ「CV」と「V」から始まる日本語の語を聞き比べ、Cの音の有無が違いであることに気づくことができる。
② ①で気づいた子音 C の音を表す文字が分かる。
③ C が日本語の母音を表す文字(a, i, u, e, o)の前にくると特定の行を表すことを理解し、発音することができる。
◆The Flow of Instruction :指導手順
1. 基本的な進め方は STEP 4 と同じ。「ま行」と「な行」の「CV-」で始まる語と、はじめの /m/ や /n/ を取り除いて「V-」で始まる語のペアを絵カード(または文字カード)で提示し、「はじめの部分」がどのように違うかを考えさせる。
*導入語のペアとしては、〈ま行〉「豆」と「雨」、「幹」と「息」、「虫」と「牛」、「麺」と「円」、「最中」と「おなか」、〈な行〉「梨」と「足」、「西」と「石」、「沼」と「馬」、「猫」と「エコ」、「のり」と「おり」 などが考えられます。「音あそび」は、できれば実際に存在する語で行う方が、意味ある活動になるので望ましいと考えています。しかしここでは、子どもたちも既に「はじめの子音」の存在を認識し始めているため、それを取り除いた後にできる語が「無意味語」であっても(例えば「マンボウ」から「あんぼう」ができるように)、音の面白さを楽しめるようです。
* 子音(C)が有声音の場合、「CV-」語の「はじめの子音」を後ろに母音(V)を伴って発音してしまう子どもが多い。例えば「まめ」のはじめの音を「/ma/」と言ってしまうような場合、「では、/ma/ をペアの『あめ』の前に足して言ってみよう」と促してみましょう。「/ma … ame/、まあめ、…?」と余分な音が入ることに気付きやすくなります。
2. それぞれの子音の「音の出し方」(「指導のヒント」参照)を説明し、子どもたちと一緒に「C … VCV・・・」(例えば「/ka-me/ … /k/, /ame/」など)のように語を「はじめの子音」と「それ以外の部分」に区切りながら発音してみる。
3. 区切れるようになった「はじめの子音」を表すアルファベットを提示し、母音 a, i, u, e, o の文字カードの左に添えながら「/m/, /m/, ま(ma)」、「/m/, /m/, み(mi)」 … のように混成の練習をして、そのローマ字綴りを理解する。
4. Worksheet 5-1 で「ま行」と「な行」の復習、および濁音の「ば行」と「が行」の導入を行う。
5.続けて Worksheet 5-2 を行う。
◆ Answers for the worksheets
■Worksheet 5-1
1.○:(2), (3), (5), (6), (9)
△:(1), (4), (7), (8). (10)
2.ma, mi, mu, me, mo
3.na, ni, nu, ne, no
4.(1) namae (2) kimono (3) kinako (4) kamo (5) kami (6) pikapika
■Worksheet 5-2
1.グループ1は /m/ の音、グループ2は /n/ の音が、それぞれ上の絵の表すものの発音に付いている。
2.グループ1:b / グループ2:g
3.ba, bi, bu, be, bo / ga, gi, gu, ge, go
4.(1) gaka (2) baiku (3) makiba (4) kogane (5) kami (6) kome (7) bigaku (8) gomame (9) gobou