《小学校英語》「音あそび」をしよう!- STEP 9「ターゲットとおわりの音が同じかな? ~ 語末音の認識 ~」
◆STEP 9:語末音の認識
語の「はじめの音」に意識を向けることができるようになったら、今度は「おわりの音」に焦点を当てます。
STEP 9 では、STEP 8 と同様に、音声提示されたターゲット音が、ある語の「おわりの音」と同じかどうかを認識できるようになることを目指します。語の「おわりの子音」は、特に bread や dog などの単音節であったり、cat や lip などの無声音であったりする場合、弱く聞こえることがあります。最初は子どもたちが認識しやすいように丁寧にゆっくり発音することもできますが、次第に自然な発音にも慣れさせていきましょう。
◆指導のヒント
日本語の基本的な音韻単位が「子音 (C)+母音 (V)」の組合わせである「モーラ(拍)」であり、1つのモーラが1つの仮名文字に対応することは既にお話しました。
これに対して、英語の書記素(文字)であるアルファベットには「名前」と「音」があり、a という文字の名前は /ei/ ですが、この a が ant(アリ)、baker(パン屋さん)、star(星)のように語を構成している場合、それぞれの音は異なります。またstar の場合は ar というまとまりで1つの音とみなされます。
このように英語では、最小の音韻単位である「音素」が必ずしも1つのアルファベットに対応している分けではありません。それゆえ、英語の母語話者は、子音だけでなく、様々な単位で音声言語を区切ると言われています。その中で大切な区切りとして、「オンセット(onset)」と「ライム(rime)」があります。オンセットは「語のはじめの子音のまとまり」、そしてライムは、オンセットに続く「母音と残りの部分」を指します。ライムは脚韻(rhyme)と似ていますが、特に「1つの音節の構造」のことを表すのが rime です。
dog ⇒ d [オンセット] +og [ライム] , stop ⇒ st+op, strawberry ⇒ str+awberry
dog のような1音節の C1VC2 語を例に考えてみると、日本語の母語話者にとって C2 よりも C1 を取り出して認識する方が困難であるとされています。日本語の「モーラ」と同じ構造をとる C1V の部分を「まとまり」として分割してしまうため、残りの C2 の部分は取り出しやすい、ということです。そのため、C1VC2 語を「C1V+C2」に区切る方が容易と考えられます。
さらに日本語母語話者には、取り出した C2 の音の後ろに母音を補い、C2V とする方が親しみのある響きとなり発音しやすく、保持しやすいようです。例えば、dog をより小さい音に区切ろうとするとき、「/d/, /og/(ドゥ、オグ)」ではなく、「/do/, /gu/(ド、グ)」のように言ってしまうことがあります。そのため、「dog のおわりの音は何でしょう?」と尋ねると、「/d/ (ドゥ)」ではなく、「/do/ (ド)」と答えてしまう子どもが多く見られます。
以上のことから、指導においては、子どもたちが語の「おわりの音」をどのように認識しているかを C2 の音のみを発音させて確認し、母音を続けないように意識させていくとよいでしょう。また、C1VC2 語を指導者側が「C1V, C2」と区切って聞かせてしまうことがないよう、オンセットとライムの区切りを常に意識して語の「はじめの子音」を独立させ「C1, VC2 … C1, V, C2」と発音することにより、英語らしい、子音だけの響きに慣れ親しませることができます。
◆活動のめあて
① 語の「おわりの子音」の音を取り出して認識し、それが「ターゲット音」と同じかどうかを識別できる。
② 複数の語を、それぞれの「おわりの子音」の音により分類することができる。
③ 語の「おわりの子音」の音を適切に発音することができる。
◆所要時間:導入活動のみ 20分/Worksheet 9-1 15分、Worksheet 9-2 15分
《Worksheet 9-1 は、こちら からダウンロードできます》
《Worksheet 9-2 は、こちら からダウンロードできます》
◆The Flow of Instruction 指導手順
1.ten, pen, pet, net, bat. mat, bag のように C1VC2語のうち「VC2(ライム)が同じ」、「C1Vは同じだがC2が異なる」、「C2のみ同じ」ものの絵カードを提示して発音を確認する。
2.カードを1枚ずつ示しながら “ten, /t/, /en/.” “pen, /p/, /en/.” “pet, /p/, /et/.” “net, /n/, /et/.” のように、それぞれの語をオンセットとライムに分割して発音し、脚韻が同じものを “They sound the same at the end.” と言いながらまとめて黒板に貼る。
* STEP 1, 2の活動のように、カードを複数示しながら “Do they sound the same?” と尋ねるとよいでしょう。実はCVC語の共通する脚韻の認識には、オンセットとライムの区切りで語を分割できることが必要です。
3.脚韻が同じ語のカードを指しながら、“ten, /t/, /en/, /t/, /e/, /n/.” “pen, /p/, /en/, /p/, /e/, /n/.”(もしくは “pet, /p/, /et/, /p/, /e/, /t/.” “net, /n/, /et/, /n/, /e/, /t/.”)のように、語の「おわりの子音」の音を強調しながら聞かせ、それらが同じ音であることを気づかせる。
* 「おわりの子音」が無声音の時には、その音を強調して(大きく)発音することは難しいため、その「音の出し方」を具体的に説明するとともに、喉の震えがないことを確認させます。
4.「おわりの音」の分割に児童が慣れてきたら、“What is the final sound?” と尋ねながら改めてカードを1枚ずつ提示し、「おわりの子音」だけを発音して答えさせる。
5.Worksheet 9-1 を配付し、1の活動から行う。ターゲット音を指導者が口頭提示したら、子どもたちにも、それを真似て何回か発音させる。ターゲット音と「おわりの音」が異なる語については、その「おわりの音」を分割して発音させながら確認する。次第に、語を構成する子音それぞれを取り出して発音できるように促して練習してもよい。
*1の活動は、1つのターゲット音に対して聞き分ける語が多いので、必要に応じてターゲット音を再提示する。「おわりの音」が有声音と無声音のペア(/t/ と /d/ など)や同じ種類の音のペア(鼻音 /m/ と /n/ など)の違いなどは聞き取りにくい児童もいるので、丁寧にゆっくりと発音して違いを認識できるようにする。
* STEP 9 では、単音節の CVC語、CCVC語に加え、おわりに子音連結のある CVCC語も少し扱います。
6. 続いて Worksheet 9-2 を配付し、取り組ませる。
◆ Answers for the worksheets
■Worksheet 9-1
1. × [bag / book]
2. ○ [map / clip]
3. × [soap / star]
4. ○ [train / fan]
5. × [dog / desk]
6. × [snake / spoon]
7. ○ [fish / dish]
8. ○ [tape / clap]
9. × [zip / cat]
10. × [cake / gate]
■Worksheet 9-2
① map / (1) ○ [lip], (2) [bat], (3) [pig]
② mat / (1) [tiger], (2) ○ [vest], (3) [moon]
③ bus / (1) [fish], (2) [bat], (3) ○ [gas]
④ box / (1) [desk], (2) [clip], (3) ○ [fox]
⑤ gum / (1) [fan], (2) ○ [game], (3) [boat]
⑥ cake / (1) ○ [book], (2) [cat], (3) [cap]
⑦ fan / (1) [ham], (2) [fish], (3) ○ [corn]
イラスト協力:愛知県立大学 外国語学部 4年 濱口 果奈 さん