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2024.05.23 教育現場より 学校での英検活用

英検の全員受験が、英語教育の質の向上につながる

関東第一高等学校 理事長(前校長)
渋谷 実 先生

国際交流主任・英語科(前主任)
小森 慎也 先生

英語科主任
金曽 祐哉 先生

英検は、生徒が挑戦するチャンスの一つ。全員受験で一人でも多くの生徒に成功体験を

理事長・渋谷 実 先生

 本校では、自らの信念に基づき、目標に向かってやり通すことを意味する「貫行」を校訓に掲げ、「知育・徳育・体育」を柱とした教育を行ってきました。2024年春の選抜高等学校野球大会に出場した硬式野球部や全国優勝を果たした競技かるた部をはじめ、スポーツや文芸に打ち込む生徒が多く学んでいます。
 一方で、そうしたものがまだ見つからない生徒もいます。私が重視してきたのが、まずはトライすること。失敗したっていい、むしろ糧となる失敗はどんどんすべきだ、そう考えています。英検は、生徒たちが挑戦する機会の一つ。目標に向かって努力するという経験を通して、必ず得るものがあります。そして何より、英語力はこの先の人生において強力な武器になります。そんな思いから、私が教頭だった2013年度から英検の受験を奨励し、2016年度からは全員受験(第1回は希望者実施。第2回・第3回を全員受験)としました。
 全員受験としたのは、「最初は嫌だったけど、やってみたらできた・楽しかった」ということが往々にしてあるからです。個別最適な学びが重視される昨今の教育には逆行していると思われるかもしれませんが、私は生徒本人が好む、好まざるを関係なく、全員に同じことを取り組ませることで拓ける道もあると考えています。本校に入学する生徒の約半数は英検4級をもっていません。「英検なんて受けたくない」という生徒だっているでしょう。そういう生徒にこそ、英検というハードルに挑戦し、合格することで、「苦手だったけど、頑張ったらできるようになった」という成功体験を積んでほしいのです。その体験は必ず社会人になった時のエネルギーになります。
 担当の小森先生や金曽先生をはじめ英語科の教員の努力もあり、生徒は着実に英語力をつけています。また、その成果は英検の合格者数や進学実績にも如実に現れています。一つの壁を乗り越えれば、また次の壁が見えてきます。生徒たちには、本校で心のエンジンを起動させ、自分にとってより高い壁に臆せず挑戦する人になってほしいと願っています。

英検という指標ができたことで、授業の質が高まり、生徒の進路の幅が広がる

小森 慎也 先生・金曽 祐哉 先生

金曽 祐哉 先生

 2013年度に当時教頭だった渋谷理事長の号令で、3年計画で英語科の改革を始動しました。LL教室の整備や授業改善に加えて、肝になったのが英検の活用です。それまでも年5回、本校独自のボキャブラリーテストなどを実施していたものの、生徒にとって明確な目標がなく、英語学習になかなか身が入らないという実情がありました。2016年度からは英検全員受験がスタートし、教員、生徒にとって「英検という共通の目標ができた」ことで、普段の授業の進め方も変わっていきました。
 もっとも大きいのは、ライティングとリスニングに力を入れるようになったことです。従来は文法やリーディングが中心の授業でしたが、教員が英検を意識するようになったことで、まずはライティングから、続いてリスニングと4技能を満遍なく伸ばすような指導に進化していきました。
 同時期に本校ではICT活用にも力を入れるようになりました。コロナ禍を機にICT活用やデジタル化は加速し、現在ではアプリ等を使って、生徒同士で英作文を添削し合ったり、朝学習で英検のリスニング問題を出題したりと、広く活用しています。特に、生徒が自身の端末に英作文を入力し、生徒同士でアプリを使って添削し合うというペア学習は、相手の表現からヒントを得たり、アドバイスをするために俯瞰的な採点者視点を身につけることができるという点において、非常に有効だと感じています。また、生徒にテスト等の一斉配信ができる、作成した問題を他の教員と共有できる、解答の集計や採点に手間がかからないなど、教員の業務負担軽減につながるというメリットもあります。
 そして、ライティングにも注力するようになった結果、大学入試で英作文が出題される一部の私立大や国公立大にも通用する力がつき、そういった大学への合格者数が増えました。英検に取り組むようになった結果、授業の質が高まり、生徒の進路の幅が広がったことは、教員としても大変うれしく思っています。

独自の教材で二次試験対策に注力。民間事業者との提携で、合格率がさらにアップ!

小森 慎也 先生

 授業や朝学習以外の英検対策としては、特に二次試験対策に力を入れてきました。インタビュー(面接)の事前学習用のヒントシート、面接官役のネイティブ教員用のシークエンスシート(インタビューの流れや質問事項、注意事項などを細かく記したもの)、インタビューのフィードバックシートなどを独自に作成し、英語科の教員総出で面接練習などを行なっています。また、準会場実施では他教科の先生方の協力も必要なので、実施マニュアルのチェックシートなども作成しました。全員受験の意義や目的を伝えて理解してもらうだけでなく、全員受験により発生する教員の負担をいかに減らすかも大事だと思います。2016年度の実施当初から、そこは常に心がけてきました。
 当初は賛否両論のあった英検の全員受験ですが、生徒が努力して成果を出してくれたことで、その価値が教員間にも生徒間にも浸透していきました。そして、2022年度、当時校長だった渋谷理事長から再び号令があり、英検対策をさらに強化することになりました。本校は生徒数が多く、教員だけではできることに限界があると感じていたため、民間の外部機関と提携。校内で英検対策講座を実施してもらうことになりました。当初は一次試験対策講座のみ、2024年度からは二次試験対策講座も開講し、日本人講師とネイティブ講師が担当しています。その結果、英検の二次試験合格率が8~9割をキープできており、効果を実感しています。

教育においては、腰を据えて一つのことを長く続けることが大事

 これまでの本校の取り組みが地域にも認知され、ありがたいことに近年は優秀な生徒が入学し、英検2級取得者、準1級受験者が増えてきました。今後は、語学学習の基本となる辞書の活用など原点に立ち返った指導も取り入れつつ、「楽しい」で終わらない英語学習を追求していきたいと考えています。
 また、海外の学校との連携を強化し、英検で力をつけた生徒たちを連れていきたいと考えています。そこで世界を体感し、英語でコミュニケーションをとる経験を通して、視野を広げ学習意欲をより高めてほしい。そう願っています。一方、本校には、第一志望だった都立高校を不合格になり進学してきた生徒が少なからずいます。英検を受けたことがない生徒も少なくありません。そうした生徒には、英検の級を一つひとつクリアしていくことで、スモールステップを踏みながら自信をつけてほしいと思っています。
 新しいものやサービスがどんどん生み出される時代ですが、教育においては、しっかりと腰を据えて一つのことを長く続けることが大事だと、英検の全員受験の取り組みを通して実感しました。やるからには長く続く取り組みにしていきたいですし、そのためにも改善を重ねていきたいと思います。一方、英検に取り組むことを通した成功体験という、全員受験の根本にある意義は、これからも変わりません。生徒には英検を道標に、本校の校訓である「貫行」を体現してほしいと願っています。

生徒インタビュー

吉岡ハヤトさん(インタビュー当時:高校2年生)英検準1級合格

 受ける級はそれぞれ違っても、英検という共通の目標があることで、「みんなで頑張ろう」という空気が生まれています。また、授業への取り組み方などを見ても、年2回英検があることで、みんなのモチベーションが高く維持されていると感じます。僕は小学6年生まで父の出身国であるインドで暮らしていたこともあり、英語は得意なのですが、やはり英検1級はハードルが高くて。課題である語彙力を強化し、今年、挑戦する予定です。そして、高校生のうちに、夢だった海外留学にも行ってみたいです。

 

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