高校で学び直す生徒に、英検を通して 基礎学力と自信をつけてほしい
【2024年度 ブリティッシュカウンシル駐日代表賞受賞】
島根県立三刀屋高等学校 掛合分校
副校長 小川 剛 先生
英語科 大野 真由子 先生
学び直しの機会を確保し、安心・安全な環境を提供する

【副校長 小川 剛 先生】
島根県立三刀屋高等学校掛合分校は、県内唯一の分校です。現在は全校生徒81名、教員11名と県内でも最小規模の高校となっています。
1953年に創立されて以来、雲南市掛合町をはじめ、地域の方々のご尽力のもと、地域に根ざし、地域と共にある学校として運営してきました。地域に生きる社会人としての自立心と主体性を育むことを教育目標に掲げ、地域課題探究活動にも力を入れています。
本校の生徒の中には、中学校時代に学校への行きづらさなどを経験した生徒も少なくないため、中学校までの学習内容を学び直しする機会の確保、「安心・安全な学びの環境の提供」は大事にしていることの一つです。小規模校の強みを活かし、教員が生徒一人ひとりに寄り添った支援に努めています。
英語の授業では小さなチャレンジと「できた」を積み重ねる
【英語科 大野 真由子 先生】
英語については、中学校時代にさまざまな理由から、系統的に習得できていない生徒もいます。また、中学校時代はおとなしく、クラスで中心となり活躍した経験が少ないものの、力を発揮する場を求めている生徒、大きな伸び代のある生徒もいます。
多様な生徒たちへ、最初に徹底するのが「提出物を出す」ということです。中学校時代に提出物を出す習慣がついていなかった生徒もいれば、真面目すぎるがゆえに「きちんと完璧にやらないと出してはいけない」と思い詰めて出せない生徒、提出物に取り組もうとするもののペース配分ができずに期限に間に合わない生徒など、状況はさまざま。答えを写してもいいからとにかく提出するところから始め、徐々に中身の質や取り組み方がより良くなるように指導しています。
学力も意欲も多様な生徒が1クラスに混在する学校ですが、授業では少人数の強みを活かし、同じ教材を使いつつも生徒一人ひとりに合った方法で指導するよう心がけています。例えば、音読しましょうと言われても、アルファベットと音の関係がわからなければ読むことができません。そんな生徒には、教科書にカタカナで読み仮名を振ってもらいます。それが読めるようになったら少しずつ読み仮名を減らしていき、最終的には読み仮名のない英文を読んでみる、暗唱してみるというようにステップアップしていきます。入学時にはアルファベットが苦手であった生徒が、3年生になって英文を読み仮名なしで音読できたときには、本当に感動しました。
また、英語の授業では、手段はともかく英語で発信してみることを大事にし、タブレット端末やAIの翻訳機能を積極的に活用しています。一つの単元が終わるごとに簡単な英文を作文してもらうのですが、日本語で内容を考えたうえで翻訳機能を使って英語にしてもOKということにしています。例えば、福祉ロボットをテーマにした単元では、「こんなロボットが欲しい」というドリームロボットについて英文を書いてもらいました。2年生25人が思い思いに考えたユニークなロボットを紹介し、4人の教員らが審査員となって、それぞれが選んだ生徒を表彰しました。
一般的な英語の指導からすると、読み仮名を書いたり翻訳機能の助けを借りたりするのは学びの本筋ではないかもしれません。それでも、できないからやらないのではなく、できることから始めて一段一段登っていくこと、小さなチャレンジと「できた」を積み重ねることが、本校の生徒にとってはとても大事なことだと感じています。
基礎学力の定着手段として、学校のグランドデザインに英検を組み込む
本校では、学校のグランドデザインにおいて、基礎学力の定着手段として英検や漢検をはじめとした検定試験を位置付けています。英検については、1年生の第3回、2年生の第1回と第3回、3年生の第1回の合計4回を全員受験としています。5級から受け始める生徒が多いですが、4級・3級からスタートする生徒もおり、受験級は自分で決めています。
英検に向けては、受験級に合わせて教材を貸し出し、取り組んでいます。教材については、1人に1冊貸し出せるよう十分な数を揃えています。また、試験直前の授業では、級ごとに部屋を分けてリスニングの過去問に取り組み、二次試験については個別で面接の練習をしています。
どんなに英語が苦手な状態で入学しても、卒業時までに英検5級を取得し、基礎的な英語力と自信をつけてほしいというのが私たちの願いです。今年度の3年生は、第1回の試験で最後の一人が5級に合格することができました。英検という目標に向かって努力をして合格するという経験は、これまであまり勉強をしてこなかった生徒にとって、とても大きな意味のあることです。スモールステップではありますが、3年間を通して生徒が少しずつ自信を獲得していく様子は、目に見えてわかります。
一方、英語が好きでもっと勉強したいと思っている生徒にとっては、学校の授業だけではもの足りないのが実情です。そうした生徒には個別に対応しており、近年は、英検準2級に合格する生徒が学年に1、2人は出るようになってきました。英検にチャレンジし、合格してさらに上の級を目指すことは、英語学習のモチベーションアップやプライドの醸成につながっていると感じます。過去には本校で英語を学び直したことで英語に興味をもつようになり、5級からスタートした英検では2級に挑戦するところまでいって、もっと学びたいと語学系の短大に進学を決めた生徒もいました。そのときは英語教師としてとてもうれしく思いましたね。
私自身、大学進学を目指して英語の勉強を頑張っている生徒を指導した経験もあります。そうした生徒たちがぐんぐんと力を伸ばして大学に合格していくのは、大きな喜びでした。一方、生徒たちと一緒になって楽しく英語を学べている今もまた、大きなやりがいを感じています。中学生までは英語なんて嫌いだ、苦手だと敬遠していた生徒たちが、そこから逃げずに再び向き合い、「こんな英文を書いてみた」などと言って見せに来てくれる。そんな姿は本当にうれしいものです。
英語教員の将来として、新たに小学生に英語を教えるボランティア活動などに挑戦し、子どもたちへ英語の楽しさを伝え続けていけたらと考えています。


