パーフェクトじゃなくていい。 英語をどんどん使い、ワクワクしながら学んでほしい
【2024年度 カナダ大使賞受賞】
長島町立獅子島中学校
英語科 新田 千夏 先生
地域と共にある、在校生16名の離島の学校

本校は鹿児島県出水郡長島町の獅子島という離島にある学校で、地理的には熊本県の天草地域に近い、鹿児島県最北地の中学校です。中学生は3学年合わせて16名で、併設の小学校では46名の児童が学んでいます。地域に密着した学校で、漁師さんから釣りの仕方や魚の捌き方を教わったり、ヒラメの稚魚を放流したりと、地域の方々に先生になってもらうシーンがたくさんあります。また、島には高校がないため、子どもたちの多くが中学卒業と同時に島を離れます。それを「島立ち」と言い、中学校の最後には島を歩いて一周し、島の人々にお礼と別れを告げる行事があります。生徒たちはゴミ拾いなどをしながら歩くのですが、行く先々で地域の皆さんがお芋やみかんや飲み物を出してくださり、「島立ちしても頑張ってね」と声をかけてくださる姿には、思わず涙してしまいます。
私自身は教員になって26年目、獅子島中学校に来て3年目になります。鹿児島県は離島の多い県ですが、離島の中でも少人数の学校で、地域の方々とのふれあいも多いこの島での教員生活を心から満喫しています。
英語は道具。使う楽しさ、つながる喜びを感じてほしい
「Don’t be shy!」「Don’t be afraid of making mistakes!」と、間違ってもいいから、恥ずかしがらず、どんどん英語を使ってみよう!というのが私の指導のモットーです。生徒にいつも伝えているのが、「英語は道具なんだ」ということ。受験に必要な教科ではあるし成績もつくのだけど、それだけじゃない。英語を使えれば世界中の人と友だちになれるよ、英語はそんな素敵な道具なんだよ、パーフェクトじゃなくてもいいから楽しく取り組もうねということを折に触れて話しています。
子どもたちが前向きに英語に取り組めるよう、新しい単元に入るときには、「この単元ではこんな力がつくんだよ、こんなふうに世界が広がるよ」と生徒に希望をもたせてから取りかかるようにしています。そして、新しい文法などを学ぶときにも、こんなときにこんなふうに使えるよね、と英語という道具を使うシーンを具体的に描くようにしています。また、授業では常に「第三者」を意識させることも大事にしています。例えば、「ALTの先生に日本文化を紹介してみよう」「獅子島に来る外国人に向けて、島を紹介するマップを作ってみよう」などと、「誰(第三者)に向けて何をするのか」という目的を明確にしています。そうすることで、相手に伝わる喜びを実感でき、英語学習のモチベーションも上がると感じています。
生徒が取り組みたくなる身近なトピックスを選ぶことも意識しています。あるときの中学1年生の授業では、「自分の“推し”を新しいALTに紹介しよう」というテーマで、推しについて文を作って発表する、そしてALTに1位を選んでもらうという組み立てにしました。自分の推しの魅力を伝えたい、知ってほしいという思いからでしょう、まだ英語を学び始めて間もない生徒たちなのに、みんな30センテンスくらい書くんです。「これってどう書けばいいんですか?」と聞きにくる生徒もいて。そんなとき私は、習っていない文法や表現でも、生徒が興味をもっていればどんどん教えるようにしています。そのときは十分に理解できなくても、後からそれが教科書に出てきたときに「あのとき先生に教わったのだ!」とつながることで、体系的な理解ができていくものだと思うからです。

島ではALT以外の外国人と触れ合う機会はほぼないのですが、オンラインを活用して世界とつながる機会をもつようにしています。例えば、ジャマイカ出身のALTと連携して、ジャマイカの中高生と会話をしたりクイズを出し合ったり、鹿児島県の取り組みでベトナムの学校とつながり互いの文化を紹介し合ったり、ニューヨークにいる私の妹家族とつないでみたり…。生徒には世界に広く興味をもってほしいと思い、自分の海外経験なども話しています。
成績はともかく生徒たちは「英語が好き、楽しい」と言ってくれていて、授業にも意欲的に取り組んでくれています。アンケートでもたくさんの生徒が「一番好きな教科は英語」だと回答してくれました。自分の裁量でこうした指導ができるのも少人数だからこそ。生徒一人ひとりを見ながら指導ができることに、大きな喜びとやりがいを感じています。
「英検って何?」からのスタート。今では生徒のモチベーションに
英検については、私が赴任した当時は、ほとんど誰も受けていませんでした。私にとって英検は取り組んで当たり前のものだったので、生徒に「英検って何?」と返されたときには驚きましたね。英検って自分の英語力を測れるものなんだよ、受験することでモチベーションにもなったり、自分の殻をやぶるチャンスになるよと英検の良さを訴え、生徒のチャレンジしてみたいという気持ちを引き出したところ、初回からたくさんの生徒が受けてくれました。今では中学生16人中15人が級を取得しています。私は小学校の外国語活動も受け持っているのですが、驚くことに小学生でも受ける子が出ています。
英検に向けた取り組みとしては、昼休みや放課後に「ミニ英検教室」を開講しています。具体的には、プレテストのようなものをやってレベル感を示した後に、実際の過去問を解いてみるといったことをしています。二次試験対策はALTの先生も一緒になって、面接練習は徹底してやっています。二次試験のためには本土に行かなくてはならず、時間も費用もかかるため、英検の受験には保護者の理解と協力が不可欠です。保護者に向けたお知らせなどで英検の良さをお伝えし、快く受け入れてくださっています。管理職の先生も英検のために時間割や時程を調整してくれて、皆さんのご理解とご協力のもと英検受験に取り組めています。
英検は子どもたちにとって大きなモチベーションになっていて、「なんで1年に3回しかないの? もっと受けたい!」と言ってくる子もいるほど。5級からそれぞれのペースで受験し、昨年は中学3年生のうち2人が準2級まで合格しました。英検4級・5級チャレンジキャンペーンは、受験のハードルが下がってとてもありがたいですね。生徒の一人が言うには、英検に向けた勉強が英語の授業の予習になって、理解が深まるそうなんです。学校の進度より進んでいてわからないところがあれば、私に聞きに来る意欲的な生徒も多いですね。
英検に取り組むようになり、英語に興味をもつ生徒が増えたように感じます。ある生徒は、入学当時は英語にあまり興味がなかったものの、英検に挑戦することで学習のモチベーションが上がって英語が好きになり、英語を学びたいと英語科にある高校に進学しました。現在は通訳・翻訳の仕事がしたいという夢に向かって頑張っています。
英語は、子どもたちに夢をもたせ、子どもたちの可能性を広げることができる教科です。そして、英語を教えることを通して、世界の広さ、文化や価値観が異なる人たちと出会い、つながる楽しさや喜びを伝えることができるのが英語科の教員です。何よりも大事なのは、生徒と一緒に英語を学ぶことを、教員自身が楽しむことだと思います。これからも全国の先生方とつながりながら、英語の楽しさを子どもたちに伝えていきたいです。

