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2021.02.12 教育現場より 先生のための授業参観

【第15弾】足場掛けを意識した段階的なリスニング・ライティング指導

愛媛県立宇和高等学校
英語科 教諭 加藤 耕平 先生

1. 宇和高等学校の「英語教育」

 全世界が新型コロナウイルスの感染拡大で、未曾有の混乱状態に陥っている。既存の「当たり前」が通用しない状況で、様々な判断を求められ、対応に追われた。私自身もコロナ禍でこれまでの指導方法の大きな転換を求められた。グループワークやペアワークが制限され、一時、知識注入型学習の時代にタイムスリップしてしまった。しかし、その後、Zoom等を使用したオンライン授業や、YouTube等を使用したオンデマンド授業が展開されるようになり、新しい学びの形が生まれた。
 私自身、5月の一斉休校時に愛媛県教育委員会から依頼を受け、高校1年生を対象とした授業動画を作成した。初めての経験で戸惑ったが、試行錯誤して10分程度の動画が出来上がった。この経験が生徒のニーズに合った授業を考えるきっかけになった。これまでも授業を組み立てる中で考えてはいたが、この動画制作を通して、生徒がエンゲージできるものは何か、より深く考えるようになった。

2. 宇和高等学校における学校再開後の英語授業の状況、指導上の工夫

 学校再開後、これまで行ってきた「4技能統合型の授業」や「Fluency>Accuracy」の授業を展開するために、私自身は「コロナ禍でもできるスピーキング指導」と「徹底的なライティング指導」に重きを置き、授業を進めることにした。以下はその実践である。

1 帯活動を使って批判的思考力を育成

 新学習指導要領での「論理・表現」や、今年から始まる共通テストでは、今まで以上に批判的思考力を求められ、それを発信する力が必要となる。本校の生徒は2年の3学期にアカデミック・ディベートをすることを目標として、現在は帯活動でディベートへの足場掛けとして,SR Trainingという活動に取り組んでいる。SR Training(Speaking & Reporting Training)は、ワードカウンターを使用した活動である。まずは肯定派(AFF)、否定派(NEG)に分かれ、生徒は2分間で英検2級から抜粋したトピック集(島根県立安来高等学校緒方先生の資料を参考に作成)から選んだトピックについて、マインドマップを作成する。そしてそれぞれ1分間で自分の主張をスピーチし、それをパートナーがメモを取る。その後、1分間で相手の主張に対する反論を行い、自らの意見を付け加える活動である。この活動を通して、生徒の発話語数が100語近くに増え、また、その後のライティング活動では、論理的に英文を書けるようになり、英検や外部模試のライティングでも好成績を残している。今後はMicro Debateなどで実践を積ませ、本格的なディベートに取り組ませたい。

【参照1】SR Training ( Speaking & Reporting Training )
SR Training_1_2

SR Training_2_2


2 パラグラフライティング/AREAに基づいたライティング指導
 

 私が本校に着任当初、生徒たちは自由英作文に苦手意識を持っていた。話を聞いてみると、「書き方が分からないから書けない」と言う生徒が多かった。そこで、パラグフライティングの指導に加えて、インターネットで公開されていた群馬県立前橋女子高等学校の web 記事を参考に作成したワークシートを使って、AREAと呼ばれる型(Assertion, Reason, Example/Explanation, Assertion)に沿って指導を行った。その結果,ライティング能力が向上し、外部試験でもライティングの点が大幅に向上した。また、ライティングをさせるときに必ず意識しているのが以下の2点である。

(1) 目的意識を明確化したライティング
(2) ルーブリックを用いての客観評価

 (1)の目的意識を明確化したライティングでは、「あなたはカナダの公立高校に留学中の高校生です。授業でEssayを書き、それをプレゼンテーション形式で発表することになりました。聞き手に分かるように、Essayを100語以上の英語で書きなさい」というように、場面設定を明確にし、何のために書いているのかを示すようにしている。こうすることで、聞き手や読み手を意識するようになり、「分かるだろう」といった意識で抽象的に書かせない工夫をしている。2〜3週間に1回程度Essay Writingに取り組ませ、それを定期考査等で出題し、ルーブリックを用いて客観評価を行っている。オンラインでの提出も行うが、生徒の作品や資料を集めたポートフォリオを紙ベースで作成させているため、基本は紙で書かせるようにしている。

【 参照2】AREA 1
AREA 1_1-1
AREA 1_2-1

【 参照3】AREA 2
AREA 2_1-1
AREA 2_2-1

【 参照4】Writing Rublic
Writing Rubric

3 教育用SNS Edmodo、YouTubeを活用したオンデマンド授業

 学校ではロイロノートを使用しているが、担当するクラスの連絡は教育用SNSであるEdmodoを使用している。ファイル共有や小テスト機能もあるので、休校中は非常に重宝した。また、YouTubeの限定公開機能を使って、iPadとApple Pencilで作成した10分程度の授業動画を配信している。内容は教科書の解答や文法事項の説明、そして発音指導など様々である。時間があるときにいつでも確認できるとあって、生徒にも非常に好評である。

4 Global ClassmatesとDMM英会話を活用したアウトプットの機会確保

 コロナ禍で、なんとかアウトプットの機会を増やそうと実施しているのが、Kizuna Across Culturesが行っているGlobal Classmatesへの参加と、EdTechで可能となったDMM英会話だ。Global Classmatesではアメリカで日本語を学んでいる高校生とオンラインのプラットフォーム上で言語交換を行う。お土産交換などの活動もあり、生徒にも好評だ。DMM英会話はEdTech事業のおかげで来年3月まで全生徒・教職員が無料で毎日30分英会話を行えるようになっている。

3.現状の問題点や課題、それに向けた取組など

 全国の高校がハード面で大きな課題を抱えている。タブレット端末の配布とBYODにより、端末確保の問題は解消されてきたものの、遠隔授業やオンデマンド動画の視聴のためには、安定したWi-Fi環境が必要となる。国や自治体がハード面の準備を進める中で、私たち教員はより良い教育方法を模索し、提案していくことが大切だと考える。  
授業はアウトプット中心の学習を行ってきたので、リーディング力をいかに向上させるかが今後の課題である。しかし、現在のライティングの取組は読解で必要な論理的思考力の向上に役立つので、指導を続けたい。また、それを正確に評価するルーブリックによる評価のさらなる研究にも力を注いでいきたい。
 今後はICTを活用した授業の流れが加速するが、楽しいだけの授業にならないように、しっかりとした知識・理解、そしてそれを使って思考力・判断力・表現力や、他者と協働する力を身に付ける「新しい学習の形」を模索していかなければならない。また、生徒たちはデジタルネイティブであり、私たち以上に対応力がある。そんな生徒たちから私たち教員も学ぶ時代が到来しており、これからは生徒と共に英語を学ぶ新しい形の授業づくりを心掛けていきたい。

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