新教科書に目を通したとき,「面白そう!」というのが最初の印象でした。例えば,勤務校で使用しているHere We Go!(光村図書)では,Unit 1からbe動詞,do動詞(一般動詞),法助動詞が出てくるので,これまでの検定教科書を使用していたときと比べて,中1初期に使える表現の幅がとても広くなりました。生徒たちは小学校の英語科や外国語活動で学んだ知識と掛け合わせ,頑張って自分の表現にしていこうとする姿が見られます。しかし,学習内容が増えたのは事実なので,小学校ですでに導入されている表現も含め,既習事項と新出事項をくり返し何度も使うことで定着を図っています。「授業で扱っていない表現は使えない」という従来の制約から解放された今,生徒は自分の言いたいことを授業の中でどんどん言葉にしています。また,このような英語コミュニケーションを重視した授業ではペーパーテストで得点できないという言葉を耳にすることもありますが,「本当の英語力が身につけば,どのようなテストでも良い結果が出せる」と考え,日々の授業に全力を注ぎ,進んでは戻る,行ったり来たりをくり返しています。
しかし,5ラウンドシステムは魔法のメソッドではありません。ただ教科書を5回くり返したからといっても英語力は身につきません。私がこのシステムを部分的に導入しようとした理由は2つあります。それはリスニングと音読をとても大切にしていることと,とんでもない回数をくり返すということです。圧倒的なインプット量を確保し,授業内だけでも生徒は1年間で教科書本文全ページを何十回も音読します。自宅での音読を合わせるとさらに回数が増えます。ほぼ全ページを暗唱している生徒もいます。もちろん,ただ音読するだけでなく,「発音に気をつけて」「教科書の登場人物になりきって」「語順を意識して」「状況・場面をイメージして」とバリエーションを持たせて,Read and Look upやOverlap,穴あきや並び替え,文頭の語句以外はごっそり削ぎ落としたりすることで,音読に飽きない工夫をしています。課題のレベルを少しずつ上げていくことで,生徒は無意識に難しいタスクをこなせるようになっています。また,最終ラウンドは予定していたリテリングをアップデートして,自己表現活動にしていこうという話を生徒としています。教えを守り着実に力をつけてきた生徒たちとともに,次は型を破っていきます。
4. 帯活動
5ラウンドシステムを導入したことで,授業準備の際に最も意識するようになったのが帯活動です。教科書を想像以上にくり返し,その中で学んだ知識や技能を自分の表現として使うことができるようにしていかなければなりません。帯活動にはバリエーションを持たせています。ざっと紹介させていただくと,「1 Minute Talk」「Picture Description」「Retelling」「パンチゲーム」「同時自己添削英作文」「口頭英文法チャレンジ」「Last Sentence Dictation」「Error Correction」「Pattern Practice Pairwork」「じゃれマガ」「Let’s make questions!」「グルグル」などです。どれも単元テストや定期テストに向けて(もしくはそれらの結果を受けて)必要なものを選択し,回数をこなしていきます。
“I like cat.” と生徒が表現したとき,すぐに「catsだよ」と訂正するのではなく,“You like cats. Me too.” のように,会話の中で気づきが生まれるように生徒と英語で話をします。また,「洋画を日本語吹き替えで観た」を英語で言いたいけど言えなかった生徒から質問が出たとき,全員で前に進むチャンスだと思いました。
毎授業このような場面では,すぐに答えを伝えるのではなく,全員で考え,使えそうな単語や表現を出し合います。最終的に私のヘルプなしで “I watched an American movie in Japanese.” が完成しました。自分たちで考えて作り出した英文なので,次に別の友人と話すとき,とても嬉しそうに使っていました。このような経験をくり返すことで,「分からないことは悪いことじゃない」「分からなければ素直に質問しよう」という雰囲気になります。私からも「みんなが考えるきっかけを与えてくれてありがとう」と伝えています。