【第24弾②】竜海中学校の英語教育~オリジナルノートと英検IBA®の導入~
岡崎市立竜海中学校
教諭 武井 翔 先生
第24弾でお話をお伺いした岡崎市立竜海中学校では、新学習指導要領の全面実施をきっかけに、さまざまな授業改革に取り組まれています。特別編では、竜海中学校独自のノート指導や竜海中学校ならではの英検IBA®の活用事例についてお話しいただきました。
新学習指導要領の全面実施にともない、ノートの活用法を再考
新学習指導要領が全面実施されるようになり、授業づくりについてもっと考えていかなければならないという意識が本校では特に高まっています。これまでの英語科授業では、教科書本文の内容を把握した上で音読・暗唱を行い、ノートに要点を整理して書く、その上で、言語材料を使ったコミュニケーション活動に取り組むことが中心でした。しかし、新学習指導要領の主旨を考えれば、自律的な英語の学び方を身に付けさせることこそ必要です。実際に英語を使いながら身に付けていくためには、思考の過程も見える化する必要があるのではないかと考えるようになりました。
そこで、この機会に、ノート指導の意味・意義を再考し、本校英語科のオリジナルノートを作成することにしました。
竜海中学校オリジナルの『竜中英語ノート』
本校独自のノートは『竜中英語ノート』というものです(以下、竜中ノート)。授業と家庭学習をつなげるためのフレームワークを取り入れており、昨年度より全校で使用するようにしました。
①独自のフレームワークを使用した学習の流れ
竜中ノートのフレームワークは、“Today’s Goal”、“My Thinking Notes”、“Key Words”、“Writing”、“Reflection”で構成されています(参照1:竜中英語ノート)。授業の導入段階で“Today’s Goal”を記入し、板書の書き写しや思考のメモは“My Thinking Notes”の欄を使用します。家庭学習で復習する際には、本時の学習内容の中から、自分にとって必要と思われる単語や表現等を“Key Words”欄に書き出して整理します。既習の語彙を拡充するために、辞書で調べた関連語句をまとめることもあります。“Writing”欄では、学んだ文構造を使用して英作文(モノローグやダイアローグ)に取り組み、最後に“Reflection”の欄で自分自身の学び方について振り返りを記入する、という流れで学習ができるようになっています。どのように学んだのかを言語化させることで、メタ認知能力を高めることも目指しています。
▲参照1:岡崎市立竜海中学校『竜中英語ノート』
このフレームワークは、コーネル式ノート術など、実社会に存在するノート術を参考にし、本校生徒の英語学習に役立つフレームワークの具現化を目指して考案しました。このフレームワークに沿った学習方法を身に付けることで、中学校卒業後も生徒が自分自身の力で勉強を続けることができるようになると考えています。
“Writing”をノートの最終段階にもってくることで、言語活動に取り組む際、常に原稿を作成してから話すのではなく、その場で考えながら話すことに意識的に取り組める点もポイントです。①思考を書き表す→②その場で考えながら話す→③言語活動を通じて得た学びや気付きを整理する→④適切な表現を用いて英作文に取り組む、といった流れを実践できるように指導しています。
②方眼ノートで思考を整理する力を鍛える
一般的な英語ノートは、英習罫のものが多いのですが、竜中ノートの“My Thinking Note”欄については、ねらいを踏まえて、方眼罫を採用しました。この欄は4分割にして重要な表現を書き留めたり、言語活動の過程をメモできたりと、方眼ならではの使い勝手の良さがあります。ワークシートは効率的な面もありますが、spoon-feedingになりがちなのも事実です。思考を整理する術が示されない場面で、生徒が自分なりに整理していくことができるよう、いかに指導するかが教師支援の勘所ではないでしょうか。このノートを通して、自らの力で適切に思考を整理する術を身に付けていってくれたらと考えています。
竜中ノートを導入したての頃は、教師も生徒もノートの使い方を試行錯誤していました。今もなお、よりよい活用法を模索していますが、導入から2年目になった今は、竜中ノートに沿った学習が徐々に習慣化してきていて、自律的な英語学習のサイクルができてきているように思います。
③生徒だけでなく、教員の授業づくりにも効果的
竜中ノートは、私たち教師にとっても有益なものです。恥ずかしい話ですが、以前は、教科書を順番通りに扱っていく中で、学習課題が不明瞭なまま授業を進めてしまったり、まとめや振り返りの時間を取れなかったりすることもありました。今は竜中ノートによって、本時の明確なゴール、適切な言語活動、まとめと振り返りまでつなげることができます。学習課題と振り返りを意識した授業づくりは、授業の基本であると思います。
自ら学び続けることができるよう英検IBA®を導入
本校では昨年度、英検IBA®を1・2年生(現2・3年生)に先行導入しました。手頃な価格設定もそうですが、生徒たちがどのような状況でも自分で英語を学び続けられるようにしたいというのが、導入を決めた一番の理由です。
コロナ禍で全国一斉の臨時休校となった際、生徒たちが自分で考えて学んでいくことに苦労している姿を目の当たりにしました。教科書以外にも、英語を学ぶ手段をもっている必要がある。自律的に英語を学び続ける方法を模索していた時に、「英検」が有効ではないかと考えたのです。英検は入試や進学の際に活用できる資格の一つであり、生徒や家庭にとっても身近な英語の外部試験ですから。
日々の授業や評価方法にも変化が
①定期テストの内容や位置づけの変化につながっている
英検IBA®の導入に際して、受験を推奨することに加えて、本校では昨年度から定期テストの改善も進めてきました。例えば、リスニングやリーディングの配点の比率を上げたり、解答用紙にマークシート方式を取り入れたりするなど、英検や英検IBA®と類似した出題形式も採用しています。これは、英検対策が主な目的ではなく、問題形式に慣れることで、測りたい能力を確実に測定するようにするためです。英検IBA®が、日々の英語学習の成果と課題を確かめられる‟実力テスト“という位置づけになれば、生徒にとって、定期テストが、‟到達度テスト”として、より価値のあるものになると思います。
②3観点による観点別評価の参考にも
新学習指導要領で評価の3観点が「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」に変わったことで、学習評価の在り方について改めて考える必要に迫られました。生徒の実力を正しく評価するために、昨年度、さまざまな工夫・改善を進めてきましたが、英検IBA®のリスニングやリーディングの問題は、パフォーマンス評価の参考にもなると感じています。
私たちも測定したい力を明確にして定期テストを実施していますが、英検IBA®を取り入れることは、より客観的指標を取り入れて生徒の英語力を評価できるという点で有効的です。英検IBA®のリスニングやリーディングの問題は、「知識・技能」や「思考・判断・表現」の観点をどう区別するのかを考える際、その問題形式から新たな視点を得ることができ、参考になっています。
英検を一つのモチベーションに
今後も、英検や英検IBA®を活用することで、どのような状況でも、自ら学び続けることができる力を育てていきたいと思っています。英検IBA®を日ごろの英語学習と関連付けながら、個々人に合った学習サイクルづくりをしていく必要性も感じています。映画や音楽などのコンテンツを英語で視聴することが英語学習のモチベーションを高めるように、外部試験を受けることも、義務的なものだと思わずに、自分の英語力を客観視し、モチベーションを高めるための手段として活用してもらえるようになることを願っています。