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2023.12.20 教育現場より 先生のための授業参観

【第30弾】主体性のある授業づくりを目指して

東京都立西高等学校
横山 義治先生

東京都立西高等学校は、杉並区の緑あふれる閑静な住宅街の中にあります。一人ひとりの個性の伸張を図り、人間としての生き方・在り方を見通した進路実現を応援し、次代を担う有為な若者を育成する伝統校です。今回、お話をお伺いしたのは、私立高校での指導歴もあり、生徒とともに新たな発見・気づきの毎日を過ごしている横山義治先生です。進学校である都立西高校で日々熱心に指導している話はもちろん、前任校の都立神代高校での経験などもふまえた横山先生の日頃の英語の授業実践や教育への想いについてお話しいただきます。

はじめに

 生徒からの「なぜ英語を勉強するのか」という問いに対して、本校では、英語を学ぶことで、自国とは異なる文化に触れ、さまざまな考え方や異なった価値観を理解することができ、さらに日本の文化について新しい視点から見直すことができるからと答えています。

 今日、私たちはグローバル化の進展により、日本が海外との関係を構築する必要性に迫られています。幅広い視野で考え、自分の意見や考えをはっきりと英語で伝えることができる力、コミュニケーション力が求められています。例えば、食糧問題が授業のテーマでしたら、世界の現状、原因、解決策を教師から一方的に教わるのではなく、与えられた情報や文献などから自分で原因を調べ、解決策を考え、そして、英語で発信してみることが大切です。そのため、本校の授業は、コミュニケーション主体の授業が基本です。政治・経済・文化などさまざまな分野で、国境を越えて、人と人がコミュニケーションをとる時代です。国内外の課題や問題について、プレゼンテーション、ディベート、ディスカッション等のトレーニングを通して英語運用力と論理的思考力を鍛え、グローバルリーダーとしての素地を育み、本校の教育方針である「世界に通用する大きな器」をもった生徒の育成を目指した教育を実践しています。今回は、私の授業の方向性(考え方)について、お伝えします。

 

4技能5領域の育成

 日本の英語教育は、「読み」「書き」に重点を置いてきたと言われましたが、「聞く」「話す」を含めた「4技能」を偏ることなく焦点を当てる学習指導が重要視されています。本校では、学習指導要領などに基づき、日々の英語学習において、4技能5領域(「聞く」・「話すこと[やり取り]」・「話すこと[発表]」・「読む」・「書く」)を総合的に扱うことを一層重視し、事実や価値を多面的・多角的にとらえ、客観的に理解し、適切に表現しコミュニケーションを図る資質・能力の育成を目標としています。まず、自分が聞いたり読んだりした内容について、正確に理解する力を、次に、自分の考えや意見を自分の言葉で適切に表現し、相手に伝える力を養います。その際、相手を納得させるために、論理性が必要になります。

 授業では、さまざまなトピックを学ぶ手段として言語知識(語彙・文法・音声)が与えられ、4技能が活用されます。単に先生の話を聞くといった受身の姿勢ではなく、主体的な学びの姿勢が求められます。ディスカッション等を通じて、他者と話し、お互いに学び合うペアワークやグループワークなどの学習形態による協働学習で進めていきます。

生徒が主体的に関わる授業づくりの工夫

 授業をデザインする際、単元の目標設定や活動と評価の整合性を意識し、単元全体を俯瞰し、ゴールから逆算して授業を構成しています。4技能5領域の育成をめざすにあたり、生徒が主体的に授業に関わっていく視点は欠かせません。
授業では、次の点を大事にしています。

  1. 言語は定着するまで時間が掛かることに留意し、既習事項の定着を図るため、授業の導入時に必ず前時の学習事項の復習を行っている。
  2.  生徒の主体性を高めるため、教師が一方的に目標を与えるのではなく、生徒自身にも目標を考えさせるようにしている。[授業の出発点]
  3. 題材についての背景知識を活性化させるため、題材について自由に意見交換をさせている。授業導入時に写真や映像を見せてイメージを膨らませたりすることで、ブレインストーミングを行っている。題材については、できる限り興味・関心がある内容、経験した・経験する可能性がある内容を扱うことに留意している。
  4.  ペアワークやグループワーク等を用いて、生徒が互いに教え合う場を設定している。発問に対しては、まずは個人で考えさせ、次にペアやグループで考えを共有することで、考えが深められるようにしている。また、ペアワークでは、パートナーを替えるなどして活動に変化をつけ、繰り返し練習ができるようにしている。
  5.  生徒の気付きを引き出すため、答えをすぐに求めず、考える時間を十分に確保するようにしている。
  6. 内容を考え、自分の言葉でまとめる習慣を付けさせるため、単元の最後に、生徒の考えを引き出す発問を用意している。
  7. 英語学習を通じて養われた思考力・表現力・判断力を他教科の学びにつなげさせていく。[授業の着地点]

教師があれこれと手を出さずに生徒たちをしっかりと見守っていく姿勢も大事で、また、技能領域の統合的な活動を実現するためには、領域別の目標を意識する必要があります。

将来を見据えた英語教育

 本校では、合格実績だけでなく、大学入試の先を見据えた英語教育に重点を置いています。英語の基礎的・基本的な知識の習得だけにとどまることなく、実際のコミュニケーションで必要となる技能を駆使しながら思考力・判断力・表現力を養うため、主体的・対話的で深い学びの視点から、多様な言語活動を取り入れています。発信型の授業を重視していますが、実は大学受験にもつながっています。3年間を通じて外国人講師(JET・ALT)が授業に入り、英語学習をサポートしています。これらの活動に積極的に取り組むことで、将来さまざまな場面で必要とされるコミュニケーション力が身につきます。

 自分の授業スタイルについてですが、教科書の各レッスンで、4技能の焦点化をおこなっています。以前は、1回の授業で、1つのレッスンで、満遍なく4技能を扱っていたのですが、どうしても焦点がぼやけてしまいます。レッスンごとに、1つの技能に焦点を当てて指導する手法を考えるようになりました。例えば、Lesson1で「読むこと」、Lesson2では「書くこと」に焦点を当てていきます。年間を通して、高校3年間を通して、マクロ的な視点から生徒たちの4技能5領域の技能を育んでいきます。例えば、「読むこと」に関しては、“概要”と“要点”を生徒が自分自身の力で読み取るためのアプローチを実践します。「書くこと」に関しては、豊富な表現活動を行うことで、自分の考えをまとまりのある文章で書きます。その際、生徒による発表の機会を設けています。発表を聞いている生徒は、感想を伝えることにより、目的意識をもって発表を聞くことで、生徒の主体性や学習意欲の向上が図られます。

今回は授業の方向性について紹介しました。次回は、授業の中身について紹介します。

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