授業に引き込む・自主学習を後押しする取り組みで、英語の基盤を築く
八戸工業高等専門学校
横田 実世先生・岡田 みゆき先生
グローバルエンジニアとしての活躍を視野に
地方の高専生の特色かもしれませんが、本校でも青森県という土地柄、入学当初はほとんどの学生が英語を苦手としています。これは、東京や大阪などの大都市と比べて、英語の検定を受ける・外国人と触れ合うなどの機会が少なく、いろいろな面で英語に関するアクセスが難しいのも一因かと思っています。
しかし、エンジニアとしてのスキルを学ぶ高専生は卒業後、海外のプロジェクトに配置され・海外に出向するといった可能性が高く、こうした状況においても即戦力が求められます。
そこで本校はグローバル教育にも力を入れています。英語の授業はもちろん、留学生を受け入れるのもその一環。地方では機会の少ない外国人との接点が生まれますし、彼らは国費留学の場合も多いため目標や学習レベルが高いので、その様子に刺激を受けて自分たちの人生を考えるきっかけにもなればと考えています。
他にも、シンガポールやモンゴルなどへの留学制度があり、1年生から参加対象となっています。定員が決まっているので、学力や志望動機をもとに参加者を選定する場合もありますが、この制度は英語学習のモチベーションにもなっているようです。また、留学することで意識に変化が芽生えて英語への意欲が高まるケースも見受けられます。
検定の導入や復習プログラムで全体の英語力を支える
英語を苦手とする学生が多い中、入学後すぐに実施する実力テストでそれぞれの習熟度を確認します。この結果によっては、1学期の半ばに行う試験直前にそれまでの授業で理解しきれなかった内容などを復習する時間を設け、そこでも結果が振るわなかった場合は次の試験前にも同じように行い、英語が苦手な学生をサポートしています。何を勉強すればいいのか分かっていない場合が多いので、こうして授業外で学習方法をアドバイスできるようなセーフティネットを用意しています。
また、英語が浸透するように英検を積極的に取り入れ、2年生を終了するまでに準2級レベルの力をつけることを目標にしています。毎年、1年生の冬までには約半数が合格している状況で、第3回検定には、ほとんどの学生が合格できるよう、授業で英検総合トレーニングの問題などを使って気運を高めるようにしています。
失敗も勉強のうち。合同練習会は自主参加制に
英検の対策は授業外でも実施しており、二次試験の前には合同練習会を開いています。試験の流れやコツ、練習方法のアドバイスを参加者全員にレクチャーし、その後は伝えた内容を参考に自主的に過去問題を集めて研究するなど、各々で学習します。人数が多いため全員へのマンツーマン指導は難しいのですが、自主学習が心配な学生には個別に教えています。
この練習会は開催の案内をするだけで、参加は学生の意思に委ねています。受験が不安な学生は参加するでしょうし、そうでない学生は自分で対策して合格すればそれでよし、合格できなかった場合は失敗も勉強のうちなので、何が自分に必要なのかを分かってもらうために、練習会は自由参加でよいかと思っています。
準会場・本会場の両方で英検サイクルに親しむ
学生が英検に挑む際は、準会場として学校で受験する体制を取っています。本校は本会場になる機会も多く、こうして定期的に英検が実施されることで、年3回のサイクルや存在そのものに親しむことができ、受験へのモチベーションにもつながるのではないかと思っています。
また、300人以上が寮生活をしている状況で、冬は足元が悪くなりやすい土地柄、多くの学生が歩いて行ける距離で受験できる仕組みがあるのは助かっています。
授業時数が限られる中、できるだけ英語と結びつく時間を
高専の授業は1コマが90分で英語の授業は週に2、3回と授業時数が限られているので、目標を達成するためにはカリキュラムを分割してきちんと履行しなければなりません。そこで、事前準備を徹底しています。何があってもここまでは理解してもらおう、これだけは定着させようといった到達点を決めて進めています。
授業中は集中力を維持してもらうため、教材づくりにはパワーポイントをふんだんに活用します。下を向くと眠くなったり、別のことに気を取られたりするので、画面の中に問題を表示して口頭で答えるといったように、極力、前を見て授業が受けられる環境づくりを意識しています。
また、授業は音声重視で、主にリスニング力とスピーキング力を養います。毎回行っているのは、暗唱例文に答える小テストです。不合格の場合は口頭での追試があるため授業前は勉強しているようで、教室へ行くとシーンと静まっています。そのおかげで、授業を始めるのもスムーズですね。小テストがない時もありますが、その際はにぎやかで授業に引き込むのが大変なくらいですが…。そして、リーディングやライティングなどの技能は課題を出し、自主学習で培っています。英語力が身に付くように、授業以外の時間にもどれだけ英語と結びつけられるかの工夫も重視しています。
こうして低学年で基礎力を築き、高学年ではエンジニアとして世界で活躍できるように科学・工学関係の英語の教本を用いて、長く海外業務を経験した教員が自身の体験も組み込んだ授業を行っています。そして、英語を用いたリサーチや研究発表、論文を要約するアブストラクトまでスキルを高め、卒業後エンジニアとして即戦力となるための英語力を養っていきます。