全員受験がもたらす「気運」。英検をランドマークに皆で高みを目指す
【2024年度 文部科学大臣賞受賞】
日本外国語専門学校
教育部 英語本科
木村 純一郎 先生
多彩な英語のクラスで「基礎+専門性」を磨く

日本外国語専門学校は、英語をはじめとした世界の言語について専門的に学ぶことのできる学校です。英語コミュニケーション科、英語通訳翻訳科、英語本科(上級英語専攻)といった英語に軸を置いた科のほか、語学力を活かす職業を目指す国際ビジネス科や国際エアライン科、国際ホテル科といった学科もあります。
英語の授業には、大きく2つの系統があります。1つは、ネイティブの教員から英語を英語で学ぶ「English Communication Skills(ECS)」。英会話を中心とした授業で、週3〜4回ほど(学科により異なる)あります。もう1つは、ノンネイティブの日本人の教員が担当する科目群で、コアとなる「英検・TOEIC演習」は週2回行っています。これらはいずれも習熟度別のクラスになっており、学生たちは切磋琢磨しながら学んでいます。加えて、学科や専攻ごとに専門性に特化した英語のクラスを設けています。例えば、「通訳・翻訳」、「エアラインイングリッシュ」、「ホテルおもてなし英語」など多彩な授業があります。
私自身も講師を務める英語本科 上級英語専攻では、高度な英語力を身につけるため、英語で学ぶイマージョン教育を実践しています。専門科目・教養科目(就職関係科目を除く)でのディスカッションやプレゼンテーションはもちろん、普段の雑談やメールや電話でのやり取りまで、英語で行うことを徹底しています。まさに「英語漬け」の日々を送ることで、英語を使う量が圧倒的に増え、日本にいながら海外留学をしているような経験が可能になっています。
また、私が担当する授業では、私が学生に教えるのではなく、学生同士の学び合いを大事にしています。具体的には、テキストをチャプターごとに学生に割り振り、担当した学生が中心になって対話形式で授業を進めます。もちろん、使用言語は英語です。欧米の国語の授業などでよく用いられるスタイルで、学生同士のインターラクトが生まれる理想の学び方だと考えています。
学生の就職先は、外資系企業、英語関係の出版社、外務省、キャビンアテンダント、クルーズ船の乗務員…と実に多様です。国内外の大学に編入する学生もいます。学生に常々伝えているのは、「英語だけでできる仕事はない」ということ。本校では2年間をかけて徹底的に英語を使い、スキルを磨いていきますが、それだけでは十分ではありません。学生には、英語を使って自分は何をしたいのかを、深掘りしてほしいと願っています。
柔軟なマネジメントで英検の全員受験を実現!

本校では、5年前から英検の全員受験に取り組んでいます。全員受験のメリットは、全学生が受けることで「みんなで頑張ろう」というポジティブな空気が醸成されることにあると、私は考えています。学生が英検を受けない理由は、落ちるのが怖い・嫌だから。リスクを取りたくないわけです。しかし、たとえ最初は気持ちが乗らなくても、みんなで英検を受けることで、受かった仲間から刺激を受けて自分も頑張ろうと思えたり、努力した結果受かったりすると、どんどん前向きな機運が高まっていくんです。以前の勤務校(高校)でそれを体感していたので、本校でもぜひやりたいと考えました。
一方、全員受験に向けては、大きく2つの壁がありました。1つは、管理上の難しさです。学生により受験級が異なるため、検定料も異なり、取りまとめに手間がかかるという課題がありました。しかし、これについては学校側の努力や工夫でなんとかできるだろうと考えました。もう1つは、「タイミングが合わないから今回は受験したくない」という学生が一定数いるということです。これについては、原則全員受験とするものの特例を認めることにしました。例えば、英検2級に合格した学生が、すぐに英検準1級に挑戦して受かるかといえば、難しいですよね。そういう場合は、担任に個別に相談し、「今回は受けず、次回、挑戦する」という選択ができるようにしました。柔軟なマネジメントが、全員受験を無理なく続けられるコツだと思います。
具体的な英検対策としては、先述の「英検・TOEIC演習」の授業を中心に、短期集中の英検対策講座なども開講しています。最近、特に力を入れているのが、ライティングです。サマリーライティングやパラグラフライティングのスキルを磨き、短時間で要点をまとめた英文が書けるようトレーニングをしています。
加えて、以前より二次試験(面接)対策に注力しており、受け方などの基本を動画で共有し、面接の練習も徹底的に行っています。英検の最大のアドバンテージは二次試験があることだ、というのが私の持論で、対面で面接の練習を繰り返すことで、学生との信頼関係も深まると感じています。
英検が指標になり、より高みを目指す学生が増加
全員受験に取り組み始めてからは、より高みを目指す学生が増えてきました。実際、2025年度の第1回の試験では、英検1級・準1級の受験者は200名を超える数に上りました。周りから挑戦を応援してもらうことで、気持ちが前向きになるのでしょう。モチベーションが高まり、良い意味で「欲が出てきた」と感じます。
また、学生にとっても教員にとっても、英検が指標となり、卒業までのロードマップを描きやすくなっているとも感じています。英検というショートタームゴール(短期的な目標)を設定して、そこに向かって一人じゃなくみんなで頑張る。一人ではできないことも、メイト(仲間)とコーチがいれば、成し遂げられるんですよね。そこにこそ、英検全員受験の最大の価値があると確信しています。そして、その先にある自分の人生のロングタームゴールに向けて、しっかりとペースを掴んでほしいと願っています。
近年は、英検の取得級や英検CSEスコアを見る企業や大学が増えてきています。進学や就職でしっかりと役立つという点でも、英検は有効だと考えています。なお、英検CSEスコアについては英語学習の指標にもなる優れものであり、詳しい見方や活用法などを他教員にも共有しています。
残念ながら、日本の英語教育はまだグローバルスタンダードに到達していないのが実情です。もう一度、みんなで必死になって英語を使う力を育てていく必要があると、私は考えています。そして、AIのテクノロジーがいくら進化しても、「外国語を学ぶ価値」が薄れることは決してありません。外国語を学ぶことで初めて自分の母国語を意識し、強化する側面もありますし、英語を学ぶことを通して「物事の学び方を学ぶ」という側面もあります。英語学習には、人生を楽しむ方法を学ぶ、人を磨く、そんな効果もあるのだということを、ぜひ、若い世代に伝えていきたいと思います。

