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2023.03.14 教育現場より 先生のための授業参観

【第26弾】「良い授業」から学び、授業改善につなげていくために

新潟県教育庁 指導主事
神子 尚彦 先生

新潟県内にも素晴らしい授業実践をされる先生方が多くいらっしゃり、その実践を伝えることにより県内教員のより一層の授業改善へとつなげたい。これまでの実践の積み重ねにより、子どもたちはどんどん英語を話したい、書きたいという気持ちに変わってきている。だからこそ、「良い授業」の中で見られる子どもたちの姿から、授業を改善する意味が伝わると信じている。

充実した研修をさらに意義あるものにしたい

 新潟県では、義務教育段階の外国語教育に関する研修として、「小学校外国語実践講座」や「中学校英語科主任研修」を継続的に行ってきただけでなく、今年度より「外国語教育推進のための小中授業改善推進事業」を開始し、授業改善モデル校の実践や成果を普及させる取組を行っている。他教科では教科独自の研修がない中で、外国語教育に対する思いの強さが感じられる。その中心を担っておられるのが神子先生である。「県教育庁では義務教育課と高等学校教育課が同じフロアに位置するので、両課がしっかり連携し、英語教育に関しては物事を進めやすい環境にあります。さらに、外国語教育のための予算が確保されていることも、こうした研修の充実につながっています。」

 「一生懸命に授業に取り組まれている先生方が多いからこそ、研修を通して新潟県内の先生方に役立つことを伝えたい。」神子先生によると、例えば「小学校外国語実践講座」は、県内の若手の先生のうち、特に外国語の授業を実際に担当している先生方を対象に行われ、外国語教育のすそ野を広げて指導力を向上させることを目指している。これまで6年間に渡り毎年約80名が参加し、すでに計500名近くの教員が受講してきたことになる。
 講座の1日目に文部科学省の視学官や教科調査官から最新の指導についての動向をインプットしていただく。2日目は優れた授業者の授業を見て学ぶ機会を取り入れている。授業参観では、文部科学省の研修を受講した英語教育推進リーダー等を中心に授業を公開してもらい、参加者は参観を通じて自身の実践を振り返り、その後の実践に繋げるという仕組みである。「受講する先生方には、自校や自身の課題をもって研修に臨み、研修から得られたものを持ち帰って、その後の授業改善に生かしてほしいと思っています。2日間の講座だけで十分な時間が確保されているわけではありませんが、今後、研修のフォローアップまで行えるようになると、より意義ある研修になると考えています。」

小学校・中学校の外国語教育における課題

 神子先生は、新潟県の小・中学校における外国語教育の課題について次のように捉えている。「小学校では、まだ教員自身が自分の英語力に不安を持っています。また、新学習指導要領も3年目に入っているが、読むこと、書くことの実践が定着しにくい印象があります。評価は妥当性のあるものでなくてはならない。県内の先生方は熱心にパフォーマンス評価を行っていますが、その評価が妥当なものかどうかについて、今後も観察していく必要があると考えています。」
さらに中学校の課題として、英語教育実施状況調査の結果、CEFR A1レベル相当、すなわち英検3級程度の達成割合が依然として低い点があるという。来年度、中学校英語としては2回目の全国学力・学習状況調査が行われるが、それに向けての取組も必要と感じている。「新潟県では、新型コロナウイルスの影響もあり、小中連携がスムーズに進んでいない現状があります。小中連携のこれからの在り方を模索し、実践していかないと、子どもたちの英語力や学ぶ意欲の高まりにつながらないのではないかという焦りを感じています。」

課題に向けた取組:小学校での授業改善モデル事業の成果と「単元ガイダンスシート」の普及

 だからこそ、こうした課題に向けた取組も充実させてきた。令和2・3年度はモデル校を指定して、「外国語推進のための授業改善モデル事業」として、「指導過程モデル」と「小中連携カリキュラム」作成に取り組んだ。令和4年度はその成果を普及しているところである。事業実施においては月に1回、神子先生自身が学校訪問し、事業改善を支援してきた。夏には大学教授による講義、秋には教科調査官が参観する授業公開などを実施し、工夫を凝らして行ってきた。こうしたモデル校での取組を通して、実践例を蓄積し、指導過程のモデル化を目指すとともに、小中連携カリキュラムや小中の学びをつなげるためのポイントをまとめてきた。
令和3年7月には小・中学校を見渡す「新潟スタンダーズ」(CAN-DOリストの形での学習到達目標)を作成し、中学校向けには評価規準も設定した。続く令和4年4月にはこれまでの成果をブックレットとして公表し、小中接続カリキュラム作成のためのファイルを作成するなど、モデル校での取組を可視化し、研修やオンラインワークショップを通して普及させている。

 「新潟スタンダーズ」については令和3年、自校化して作ってもらった。CAN-DOリストは往々にして設定することがゴール化してしまい、その後活用されにくいという課題があるが、今回は実践発表を通じて活用までに至った。目覚ましい工夫点が「単元ガイダンス」を行うときに自校のCAN-DOを可視化する形で「ガイダンスシート」を作っていることが挙げられる。ガイダンスシートを通じて、生徒に単元のCAN-DOを共有しながら授業を進めているのである。授業を受ける生徒自身がこの単元において何ができるようになり、何を成し遂げるべきかを理解したうえで授業に取り組めるというのは、さらなる深い学びにつながる画期的な取組であると言えよう。この取組はどんどん周知し、他地域においても導入されたい。授業改善の途中、生徒は最初、授業が変わったことについていけなかったという。しかし、粘り強く2、3単元繰り返し、同じような手法で技能統合するような言語活動を繰り返していくと、「生徒たちは本当によく話すようになり、よく書くように変わった。」と神子先生は嬉しそうに話した。
この「単元ガイダンスシート」は話すこと、読むことの「目指す力」を目視できるように書かれている。話すことのルーブリックや振り返りシートも含めて大変工夫されており、非常に配慮された仕上がりになっている。この「単元ガイダンスシート」は、モデル校のケースであった為、神子先生が現場に入りながら先生方と懸命に具現化した産物だ。「県内のすべてにおいてここまで上手くいくことは困難だと思っている。しかし、この中のエッセンスを感じ、先生が気づいて変わってもらうことが大事だ。」と強く願っている。「大切なのは、これが新潟県のスタンダードではなく、これから今後、広まっていってほしいということ。」なのだと思いを強くした。

>ガイダンスシート(PDF)はこちら

課題に向けた取組:中学校での動画配信を通した指導改善パッケージの活用

 「Web配信集計システム」という学力向上、授業改善の取組が、小学校では国語、算数、中学校では国語、数学、英語で、これまで10年以上活用されている。このシステムとはどのようなものか。「こんな授業改善を行いましょう、という授業改善動画と、知識・技能の活用、思考力・判断力・表現の育成を目指した問題を配信するシステムです。登録している中学校に年5回問題配信を行い、PDCAサイクルで指導改善促すことを目指しています。」
 1時間の授業の中で、前半で配信された問題を解き、後半で生徒の解答状況を教師が見て、どの問題を取り上げるかを考えながら対話的な学びを展開できるよう、問題の解答状況(形成的評価)と指導がパッケージになっており、解答の根拠を生徒同士が述べあったり、英作文の内容面や言語面について交流したりするという。年間5回配信されるということは、年間の授業配当時数にこれら5時間を組み込まねばならない。「最初は年間指導計画の中に入れるのが難しいという声もあったのは確かですが、今ではこれをベースにしながら授業計画を組む学校が増えています。中学校はなかなか授業改善が進みづらい状況がある中で、これは意義ある取組だと思っています。」パッケージを活用した授業が、現場の先生方にとって授業を見直す貴重な5時間になっていることが伝わってくる。

頑張る先生方の実践を広げるために

 県の指導主事として、新学習指導要領の趣旨理解を深め、指導と評価の一体化に向けた授業づくりを推進するよう施策・事業を講じることも引き続き重要な役目である。県内には授業改善に一生懸命取り組み、情熱をもって子どもたちと向き合う先生方がまだまだ多くいらっしゃる。そのような先生に光を当てることが県教委の務めだと神子先生は感じている。そうした努力を続ける先生方の実践や思いを県全体に広げ、指導観を変えていくような動きを担っていきたい。こうした決意を胸に、神子先生はこれから県内の好事例を探して発信し続けている。

>「先生のための授業参観」一覧はこちら

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