英検を通じて「自学自習」のクオリティを高め、実力を大きく伸ばす。
取材日:2023年10月24日
本郷中学校・高等学校
佐久間 昭浩校長 山形 幸恵先生
「1人でも大丈夫」と、歩いていける子たちを育てたい
佐久間 昭浩校長
本郷中学校・高等学校は東京都豊島区にある、「自学自習」を教育の柱のひとつにする一貫校です。校訓は「強健・厳正・勤勉」。将来のリーダーとなれる男子の育成を目指しています。保護者の皆様へは、「自分で歩ける子、この子なら大丈夫と言われる子」を育てることが目標だとお伝えしており、そのためには、生徒たちが「自学自習」を重ねて自己研鑽できる環境づくりが大切だと思っています。その環境づくりの一環として、生徒たちには英検受験に取りくんでもらっています。
自主性を育てるという意味で成長が感じられる一例として、英検の合同学習(2次面接対策)があります。先輩が後輩を教える仕組みは学校で作りましたが、その後は生徒たちが自分たちで工夫をしながら後輩の指導にあたっています。後輩は、指導する先輩が格好良い、自分も来年は先輩のように面接官役をやりたいと感じるようで、その思いが強い子ほど目標としている英検級に合格しています。そんな先輩・後輩の関係が受け継がれていく中で、上級生にしてもらったことを下級生に還元する気風が定着しました。英検が生徒の自主性を育てる役割も担っていると感じています。
通常の授業は騒がしくなることもありますが、本校の入学を検討していただく生徒や保護者向けへの見学会でも、ありのままをお見せして、それを受け入れられる方が入学していただけたら良いと思っています。私も含め、教師は生徒が自主的に学んで結果を出す姿を見ているので、細かいことは言わなくても大丈夫、と生徒たちを大いに信頼しています。
5級からの段階的な受験で、集団のエネルギーが高まる
山形 幸恵先生
15年ほど前から、生徒には5級から4級、3級と段階を踏んで英検の受験をしてもらうようにしています。生徒が小学生の頃は保護者などの手を借りながら勉強をしていたと思いますが、中学入学後、自力で歩き始めた最初のタイミングで5級、4級を受験し、多くの生徒が合格証をもらう。5級、4級は比較的合格を得やすい級ではありますが、成功体験を積み重ねることに意義があると考えています。「上の級に挑戦してみよう」というモチベーションにもつながっていますね。ところが、準2級あたりから1度では合格できない生徒の数も増えてきます。不合格だった生徒は、最初、悔しい思いをする。ただ、悔しがっても仕方がありませんので、自己分析をすることになります。「あの生徒が受かった、この生徒も…」となってくると、「自分も合格できるはずだ、他よりも早く一歩先を行きたい」と気持ちが変化し、「自分はどこが弱かったのか?リーディングか?ライティングか?」などと、自主学習へのモチベーションが高まります。生徒同士が刺激を与え合いながら取り組む自主学習が強いエネルギーとなり、中学卒業時には多くの生徒たちが2級に合格します。昨年は高等学校で5名が1級に合格しました。
受け持っている生徒たちの受験級が上がってきたタイミングで、私も久しぶりに英検1級を受験しました。もちろん合格しましたが、社会問題は当然ながら、経済・科学・医学など様々な知識が要求され、大人も改めて学ぶことが多い問題で、実践的な英語が学べることも再確認しました。総合的な英語力を問われる英検は、自己研鑽という視点でも大変有効な一つのツールだと思います。
英語学習を通じて、強い精神力を備えた自主性を養う
山形 幸恵先生
生徒が行う英検受験の模擬面接は、コロナ禍では中止していました。コロナの感染状況が落ち着いてきた2023年に再開するタイミングで、生徒たちの受験級が上がったことを受け、これまでの3級から2級までの模擬面接だけでなく、準1級の模擬面接も始めました。英検の受験は、本校の教育理念の一つである「自学自習」へのモチベーションを高めるだけでなく、生徒たちが協力してお互いを高め合う気持ちも育んでくれています。
本校では多くの生徒が英検に挑戦していますが、校内での受験は行っていません。もちろん、校内だとリラックスして挑めるのは分かっていますが、生徒たちには大学受験も待ち受けているので、緊張感のある環境でも実力を発揮する精神力を校外での英検受験で鍛え、大学受験に備えて欲しいという思いがあります。
英語教師として生徒たちの「自学自習」をバックアップしたいという思いから、勉強方法の助言はしています。英検3級や準2級でつまずく生徒は、リスニングが苦手なことが多いようです。リーディングは目の前に文章があるから自分のペースで読み解くことができますが、リスニングは文字が何もない状態で耳だけで音声を追いかけ、最後まで聴き取る必要があります。自分にあったペースでは読み上げてくれないリスニングに早くから慣れておくことが大事です。私の授業ではリスニングに慣れてもらうために、リスニングの授業では文字を記載した教材はその場では使用しないことにしています。聴いた後にまず席が近い生徒同士でどんな内容だったかを話し合ってもらって、その後にもう一度聴きながら各自でメモを取って要約を再構築してもらいます。日本語と違い、英語は主語と述語を見失うと後の文章が分からなくなるので、意識して聴くことが大切なんです。ペアワークでの活動では、お互いがお互いの知識を補いながらできるのでとても有効的だと思っています。一連の活動の後にスクリプトを見せますが、こんな簡単な内容を聞き取り覚えておくことができなかったのかと気づく生徒が多いです。
高校生になると単語や慣用句を一つでも多く覚えようと頑張っていますが、「知識」を覚えるだけではいけないということを常に伝えています。それを使って伝えたいことを自分の言葉で語り、思いを英語に託せる学びを得て欲しいと思っています。
実践的な英語を身につけ、将来に役立てたい
河内 駿平さん(インタビュー当時 高校2年生)
英検の準1級の模擬面接で面接官をします。僕自身、2級まではスムーズに合格しましたが準1級では悔しい思いをしたので、その気持ちを忘れず、合格を目指す後輩たちの後押しができればと思います。今は模擬面接に向けて動画などで英語に触れる機会を増やしているので、自分のスキルアップにも繫がっています。
以前参加したニュージーランド留学では、日本人のスピーキングの弱さを感じました。入試科目だからという理由で勉強するのも良いですが、海外の人とコミュニケーションが取れる実践的な英語を身につけた方がはるかに人生の選択肢が広がると思っています。そんなことも後輩には伝えたいですね。英検は年に3回受験がありますし、スピーキングやリスニングなど実践的な英語力の向上に役立つので、後輩たちにも積極的に活用して欲しいです。
今、私が目指しているのは1級合格。そして進学先は国内の大学やイギリスの大学など、将来を考えていろいろ調べているところです。